理髪店にて

 

長い休みでも、行けるのはスーパーと床屋ぐらいしかない。

 

床屋に行くと、必ずブログを書きたくなる。
麻婆豆腐を食べると、必ず苺を食べたくなるように。

 

店長と年配の男性従業員一名、洗髪・剃刀専門の女性従業員一名、
要は、お兄ちゃん、おっちゃん、おばちゃん、の計三名の理髪店だが、今日は女性店員がいなかった。
ふと前回は店長がいなかったことを思い出した。この店はいつも誰かがいない。

おばちゃんがいないということは、洗髪や剃刀も全て男性従業員で回していくことになる。当然人員が足りない。
なので、緊急事態宣言中であっても、雨であっても、店内は微妙に混んでいた。

男性店員でも洗髪や剃刀は充分対応できるが、やはり疲れているのか、今日僕の髪を切ったおっちゃんの仕事はやや散漫になっている感じだった。

この店は三人が揃わないとうまく回らない。チームなのである。

 

おっちゃんの櫛の入れ方が雑で、櫛を入れるたびに、痛い!と叫びたくなる。
しかも、まんべんなく櫛をいれるのではなく、ずっと同じところに櫛を入れ続けている。


「な、なんで、痛い!.....お、同じところばっかり、痛い!、く、く櫛入れるんだ、痛いっ!」

 

声に出さずに痛みに耐えている自分の姿を、またもう一人の自分が天井のあたりから俯瞰していて、それがツボにはまってしまい、突然笑いがこみあげてくる。

歯医者の時と一緒である。

多くの人にとっては、痛いという主観だけだが、僕にはそれを見ているもう一人の自分が現れる。

まるでステージの上で痛がっている自分と、客席からそれを眺める自分が同時に現れるのである。

痛がっている自分がもう間抜けに見えてしまうと、痛みを同時に感じながら、同時に耐えがたい笑いがこみあげてきてしまうのである。


痛!笑、否、笑ってはいけない(と手首をつねる)!


痛!笑、否、笑ってはいけない(と手首をつねる)!


痛!笑、否、笑ってはいけない(と手首をつねる)!

 

地獄でした。

 

次回は三人ちゃんといてほしい。心からの願いである。

外に出ると雨はすっかりあがっていた。□