追悼

 

美しい人になりたい。

 

.......というのが自分の人生の漠然とした目標になっている。
別にきれいに着飾りたいというような表層的な意味ではなくて、心が清らかで、ぶれもなく日々を真摯に生き、輝く存在でありたい、というような目標であるが、改めて考え直してみてもどうも漠然としていてうまく言葉にはできていない。

 

実はこの「美しい人」というのは、1999年のテレビドラマのタイトルなのである。

妻を亡くした美容整形外科医のところに、整形手術を希望する女性患者がやってくる。
女性は夫にDVを受けていて、顔を完全に変え、夫から姿を隠したいという。
整形外科医は、彼女に整形手術を行うが、無くした妻にそっくりな顔にしてしまう。
そこから、整形外科医と女性患者は少しずつ惹かれていってしまう。

ジェーンバーキンの主題歌が、ほろ苦くて、痛くて、悲しい大人の恋の物語を彩っていたことも強く記憶に残っている。

このドラマで美容整形外科医を演じたのが田村正和。そして、整形手術を受けた女性患者は常盤貴子

二人の姿の美しさもさることながら、物語の中の彼らの所作や心根といったところにも「美しい人」というタイトルに象徴されていて、当時の自分には「こんな美しい人でありたい」と強く焼き付いたのであった。

 

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田村正和のドラマでもう1つお気に入りを挙げると「オヤジぃ。」がある。
こちらは2000年のドラマ。
田村正和は、ある町病院の院長であり、家では超がんこおやじであり、その言動で家族や周りの人々を大いに翻弄する。
病院を継がせるつもりでいた息子が写真家になりたいといって大げんかをする。
息子は家を出て写真家をめざすが、自分が思っていたようにうまくはいかず挫折をしかける。
橋の上で自分の無力を噛みしめ、写真を川に投げ捨てるのだが、川にはオヤジの姿が。
流されていく写真を1枚1枚ひろいあげてこういうのだ。

「お前には病院を継いでほしかった。
 それでもお前が写真家になりたいというから見ていたが、
 これがお前のやりたかったことなのか。
 病院を捨ててまでやりたかったことがこれしきのことなのか。」

うち崩れて号泣する息子(岡田准一)。

この映像にのって主題歌である花花の「さよなら大好きな人」が流れるのである。
もう、あほのように泣きまくって、こちらも記憶につよく焼き付く名作となったのであった。

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田村正和さんが亡くなったという訃報に言葉を失った。

 

志村けんさんが亡くなったときに並ぶ大きなショックだった。

 

彼らが残してくれた多くの作品をまた紐解きながら、偲びながら、人生の貴重な時間を共有できたことを感謝し、振り返り、噛みしめたい。

心よりご冥福をお祈りいたします。□