土用

 

「うまい鰻は待つものよ」

 

大学時代の漫研同期の言葉が脳裏に残る。

かつて、野田岩の鰻を食べたいと思って赤羽の方に出かけて行ったのだが、店頭にものすごい行列ができていた。

暑い日だった。確か土用も近づいていたしNHKのプロフェッショナルに出ていたりもしていたかで一層、ごったがえしていたのかもしれない。

夏バテを乗り切りたいという思いもあったが、これでは鰻を待っている間に夏バテを起こしそうだ。と本末転倒な状況で、結局1時間くらい待たされただろうか。

そんな冒険譚を同期に伝えたとき、彼は言ったのだった。「うまい鰻は待つものよ」

 

鰻が好きである。鮨に並んで好きである。

鰻を食べると決めたら1週間ほど前から腕立て伏せを始めて、その日に備える(嘘)。

 

先日、近所に人気の鰻店があると聞いて出かけて行ったのである。

店にはすぐに入れた。だが注文して30分経っても、とんと鰻が出てこない。

 

「うまい鰻は待つものよ」

 

そのもき学生時代の同期の言葉が脳裏に蘇った。

まさか鰻を捕まえに行くところから始めているのではないか?....そんなことすら思い始めたときに、ようやく注文していたうな重が出てきたのである。が。

鰻が小さい..............。

これは致し方ないのだろう。

やっぱり鰻が品薄であることにはここ数年変わりはないのだ。この希少感も鰻を鰻たらしめている大きな要因なのかもしれない。

 

ごちそうさまでした。□