夢十夜 Season6 第五夜

 

こんな夢を見た。

 

自分の美術大学平井堅が途中編入で入学してきた。

遅れて入ってきたからハンデがあるかと思っていたが、直ぐに開催された学園祭で、誰も描くことのできないような巨大な襖絵の連作に着手して、1枚だけ描くと、すぐに美術大学を休学してしまった。

襖絵は途中だったが、最初の1枚だけでも美術界を大きく揺るがせるような傑作で、業界で絶賛され、大きな話題になってしまった。

才能のある奴はいつはじめても、世界の本流に食い込むだけのものを最初からもっているのだ、という憧憬と失望が混ざったような気持で、襖絵を見ていた。

その平井堅から、家に遊びに来いと訪れた。

芝生のある広い庭から扉を開けると、20畳ほどの広々としたフローリングのフロアが現れる。壁は全面黄色い。いろいろな設備が壁際に立てかけられたり並べられたりしている。

「ここで俺は制作や創作をしている。自由に使ってくれていい。」

かつてない集中力が発揮できる不思議な部屋で、あっという間に時間が過ぎて行った。

平井堅には見つからないようにして制作を進めたくて、翌日の早朝、こっそりと部屋に入り、作業を行っていた。

作業が概ね終了するという間際に、隣の部屋あたりからごそごそと誰かが動き始める気配があった。

隣の部屋に通じるであろう扉があって、その向こうで平井堅が眠っていたのである。今まさに彼が目を覚まして、洗面所で顔を洗う水の音が聞こえる。

今すぐにでも扉が開きそうな気配を感じ、慌てて使っていた道具を元の場所に戻していく。が、戻したはずの道具が目を離すと、また元の位置に戻っている。片付けたはずの床が散らばっていたり、壁に絵具が吹きこぼれたりしている。何度やっても元に戻らない。

ばれるよりはましだ。と片付けを放棄して外へ飛び出して扉を閉めたとたん、隣の扉が開く音がした。□