会場内は原田治氏が生み出してきた「かわいい」グッズや作品にあふれ、来場した多くの女性はそこここにカメラを向けはしゃいでいるが、原田治氏らが生み出したパレットクラブの片割れとして、イラストレーションを学んできた自分は、その舞台裏に思いを馳せる展覧会であった。
イラストレーターという言葉もない時代に、イラストレーターという業種やイメージを生み出したパレットクラブ。
それを礎にしてイラストレーターという業種が普通に存在する時代になったが、今、彼らのような生き方ができているイラストレーターはいないと思う。
時代も手伝ったのだろう。
社会的なニーズ、経済の状態、そして彼らの存在意義が、奇跡的なアクロバットのように一直線に並んで、彼らが時代を支え、彼らが時代に支えられた。
原田治氏や安西水丸氏の作品は、今見ても色褪せずに強い存在感を放って、残り続けている。彼らの生き方やスタイルそのものも作品だったのではないか。
いい時代だった。
なんていうと、また老人が昔を振り返っていると言われてしまうかもしれないが、やっぱりいい時代だったのだと言わざるを得ない。それに憧れてイラストレーター目指してしがみつこうとしていた我が青春も、また苦くて愛おしい。□