制作日記 「若者たち」

 

アトリエ新参の若者(2名)と飲む。

 

若者がファインアートから離れていく時代である。

ファインアートは、
お金もかかり、手間もかかり、見返りも全くない。
唯々、唯々、表現のためだけの表現である。
ネットにはもっと効率の良い作品発表の場がある。
さらに、ファインアートに携わる側からみても、
正直、絵画で表現すべきことは終わった、と囁かれ
たりもしているほどだ。
若者はファインアートから離れている。確実に。

それにもかかわらず、若者がアトリエにやって来た。
彼らは何を考えているのだろう。

それを聞きたかった。

 

「音楽をやっているのですが、
 音楽では表現しきれないところがあって、
 絵画を使って表現できるのではと思い、来ました」

 

「近所の保育園で遅れて子供を迎えに来た母親が
 保育園側にめっちゃ謝ってて。
 それを見て、何故だかとても腹が立って。
 そんな気持ちを絵画にしたいと思っています」

 

考えている。やりたいことがはっきりとしている。
自分が彼らの年頃だったころと比べても、
なんとしっかりしていることか。
当時の自分など、何の根拠も、目標もなく、唯、

「会社辞めて絵描きになります。なりたいです」

と吠えていただけだ。
ファインアートからの若者離れという現象は事実だが
しっかり考え、目的をもってファインアートに臨もう
としている若者は確実にいるのである。

かつて若者で先生や先輩に、
なにやら管を巻き、未来に向かって吠えていた自分が
今や先輩となり、若者の管を巻き取っている。
思えば、当時の先生や先輩の歳を超えてしまっている。
でも当時の先生や先輩のスキルに到達できているかと
問えば、今なおモラトリアムのような日々を繰り返す。


若者の頼もしさや将来への期待を感じると同時に、
もっと頑張れや俺。と思う貴重な時間でもあった。□