「買う」という行為を分析してみる。
「買う」という行為は、大きく3つに分かれているように思う。
1.「初めから、ほぼ、買うと決めているケース」
2.「初めは買うつもりはないが、その場で買うと決めるケース」
3.「じわじわと買う方向に向かい、何かのきっかけで買うと決めるケース」
1について、
一般的にいう「お買い物」はこれだろう。
スーパーマーケットに行くとか本屋に行くとか、欲しいものが明確になってそれを手に入れるのは、最初から買うことを決めている。
これまで作品が売れたときを振り返ってみると、購入してくれた人たちは会場に来る前から購入すると決めていたように思う。
会場に入るやいなや「どれにしようかな」という感じで作品を見ている。購入する意欲の変化を%で示すと、80%→100%という感じか。
この夏に一澤帆布の鞄を買ったが、このときもほぼ買うことを決めて店に入っていた。
2について、
いわゆる「衝動買い」である。0%→100%へ購買意欲が変貌する。
以前、わたなべゆう先生の個展を訪れたときに、見学だけのつもりが一瞬で「ほしい!」という気持ちになって、作品を手に入れたことがあった。
自分も、そういう作品、会場を作りたいと思っている。ずっと。今も。
MOA美術館で素晴らしいぐい吞みを見つけたときは、瞬時に「欲しい!」に火が付いたが、価格の条件が合わずに断念したケースもある。これは0%→100%→0%だが、今でもあのぐい吞みは欲しい。
3について、
購買欲が20~30%くらいから始まり、50~70%と増えて(ときには減ったりして)、最後に何かの後押しがあって100%になるようなケース。
どれにしようかな。どうしようかな。と商品を選択しているとき、なんとなく欲しいけど、どうしよう。と悩み、最後は店員の推しや、突然生産中止が決まって最後の1つになってしまったような追い込みがあって購入を決めるようなケース。
50%くらいのあたりを行ったり来たりしている敬愛する作家の絵画作品がいくつかあるが、契機が来ずにまだ手が出せていない。いつか購入する日が来るだろうか。
ふだんはなにげなくものを買っているが、逆に買ってもらうということを考えると、「買う」というところまで人の興味を引き上げるのはとても難しいことである。
「買う」まで行かないにしても、購入意欲にしたら「30%は買ってくれている」という見方もできるが、0%を1%にすることすらとても難しいと体感する。
買ってもらうことが目的ではなくて、まずは観てもらうということがその前段にある。
とにかく作品をよくするしかない。
確実にお客さんを驚かせ興味や意欲を上げるもの。
あとはそれを後押しする言葉が必要かもしれない。
言葉に頼るのは作家としては卑怯かもしれないが、キラーパスだけではゴールできない。キラーパスをしっかりゴールへ運び込む、営業という仕事もとても重要なのだと思う。
真摯に仕事をするのみである。□