「あなたのおかげで描けたのよ」
長い間、一緒に絵を描いてきたYさんの個展を見学させてもらった。
公募展に出品するS100号の作品を、毎年2枚、20年に亘り描き続けてきた。
Yさんはインドの文化をテーマにした作品を描いている。
個々の作品は1枚ずつでも観られるように描いているが、
実は連作になっていて、作品を横に繋げると長い1枚の作品になるように描いている。
ご高齢で、数年前に公募展への出品を卒業されたこともあり、
今回、全作品を一堂に並べ俯瞰する展覧会が企画されたのだった。
壮観である。
毎年作品は観せてもらっていたが、全てを繋げて見るのは初めてだったし、
そもそもご本人にとっても初めてだったのではないか。
「あなたがチラシをくれなったらインドに行っていなかったのよ。
あなたのおかげで描けたのよ。」
「・・・?」
20数年前、Yさんと知り合ったばかりのころ、
Yさんがアジアの文化が好きという話を聞き、
偶然、万博記念公園の民俗博物館で開催されていた、
インドのサリー展(女性が着る民族衣装)のチラシをお渡ししたことがあった。
当初Yさんはベトナム旅行を計画していたらしいのだが、
このチラシをきっかけにサリー展を見に行ってから、インドに大きな興味を持ち、
ベトナムからインドへの旅行に切り替えたらしい。
どうやらそれがこの20年に亘る大作を描く大きなきっかけになったというのである。
多分、Yさんがこじつけて、話題を作ってくれただけなのだろう。
が、これがいわゆる「バタフライエフェクト」なのではないか、とも思った。
普段は、むしろ世界を大きく動かす大きな仕事や事件に目を奪われがちだけど、
逆にほんの小さなことでも、世界を動かすことがあるのかもしれないと思うと、
勇気をもらえたり、元気をもらったような気持ちになれるものなのだなと感じた。□