刺抜き。

 

2023年の1月にチケット抽選に漏れて、くそったれ!と吠えていた、

椎名林檎のライブ「椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常」だったが、

知らぬ間にお皿が発売されていたので、ポチる。

 

「知らぬ間に」というところがポイントだ。

あのとき、くそったれと吠えてまで感情が高ぶったイベントだったはずなのに、過ぎてみれば、そんな感情は、記憶の彼方に消し飛んで、のうのうと生きる今。

何なんだ俺は。

所詮、人の欲望なんてそんなものよ。

 

歳を重ねたからだろうか、もし今後チケットに漏れても、もうどうでもよくなっている気もする。もしはずれたとしても、くそったれ!と吠えることはなさそうだ。放生会に封入された先行予約ナンバーを眺めながら、そんなことを想う。

だって今どき、ライブビューイングだの、ネット配信でもライブは観られるようになってしまったし、それを見逃したとしてもちょっと待てば、お皿になって発売されたりもする。
生で観たい!というのは今も当然の価値としてあるが、同時に会場への往復の混雑やら、その他いろいろな手間や調整を考えてしまうと、家で深夜にでもゆっくりワインでも飲みながら、BDやらネットで鑑賞する価値のほうが高いように思い始めてる。カメラだって会場よりも演者により近く、最高の特等席だし。まあ要するに、おっさんになったということです。
歳の数は、諦める数に比例する。ということです。

 

さらに極論、もう観なかったとしても、また次回!でもいいとすら思い始めていたりもしている。その間の数年も、おそらくすぐに何か他の事案で埋まってしまうから、気づけば、次が来てる。とにかく早いのだ、今という時代は。

そう思うとアーチストって大変だ。
客は天邪鬼。常に上から目線でただ求めて来るだけだし、応えなければすぐどこかに飛んで行ってしまう。

 

人の目をつなぎとめておく。というのは、もうそれだけで、とんでもない才能なんだな。と改めて思ってしまうのである。□