今日の一冊

 

暗黒館の殺人」 綾辻行人

 



一冊といってるけど、四冊だから。

読み始めたのが3月末で読破に2カ月くらいかかってる。

とんでもない大作だ。

でも、その分、ものすごい読後の達成感。

ああ、ミステリって最高だ。と、改めて思う。

 

再読である。

 

初読は、10年以上前になる。
当時体調を崩して入院したとき、読書以外できることが無く、丁度講談社ノベルズで発売されたばかりの本書をひたすら読んでいた記憶があるが、トリックも犯人も綺麗さっぱり完全に忘れていた。
ただ、消灯の早い病院で、続きが気になって、ロビーに降りて夜遅くまで読み続けたことは今もはっきりと覚えているのだが。

 

退院してから、職場の先輩が本書を読んでいたので感想をたずねたところ、「いい加減にしろよ、この本!」と、かなりお怒りの様子。
「いつまで引っ張ってんだ、さっさと真相を書けよ」と。
それを聞いた当時は、読んだばかりだったから、ストーリーの流れもきっちり覚えていたと思うが「そんなに怒る?自分はそうは感じなかったけど」と思いつつ、ただただ、怒っていた先輩の姿がなんだか面白く、ことばと共に記憶に残っていた。

で、今改めて読み、当時先輩が怒っていたのはこれか、というあたりに差し掛かった時、先輩の怒りの顔がフラッシュバックされ、不覚にも爆笑をしてしまった。確かに引っ張ってるわ、これ。

「ダリアの日」という一族だけが参加できる怪しげな食事会に招待された主人公・中也。「あれはなんだったんですかっ、私はなにを食べさせられたんですかっ!」と迫る中也に、「あとで話す」「もう少ししたら話す」「夜が明けるまでには話す」と、回答を先へ先へと送っていくのだが、そのかわし方が、何度も繰り返されるくどさに、思わず失笑してしまった。今度こそ聞き出すと迫った時に、別の謎を吹っかけてきて、「えっ」となって、また先送り、みたいな。落語か!と。

だが、改めて読んでも、自分は綾辻行人ファンであり、この館の世界にずっと浸っていたい、という気持ちが強くて、真相を伸ばしていくこのやり方に文句は無かった。
むしろ、真相を知ってしまった後の喪失感を先延ばしにできるようで、ファンにはブランデー片手にミステリーを読みふける時間が与えられ幸せだとすら思ったのだ。


 

 

(注意:以下、自分のためのメモ。すべてのネタバレを書くので読んでない人は見ないように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・冒頭で塔から落ちた現代の江南と、真犯人の江南忠教が入れ替わっているのが最大のトリック。現代の江南が、塔から落ち、昏睡している間に時代を超えた「目」となって、江南忠教や、浦登玄児、中也の活躍を見ている。という構成。

・散々引っぱった「ダリアの日」は、ダリアが達成しえなかった不老不死を実現するべく、「ダリア」自身の肉を混ぜたパンやらスープを食す儀式。

・江南忠教が、殺害する動機は、「苦しんでいる人間を見ると、早く殺して楽にしてあげなくてはいけない」スイッチを持っていた人間だったということ。「緋色の囁き」の犯人もだが、綾辻作品には「そういう人間だった」という特殊な存在を生み出し、動機の説明とする手法がよく使われる。

・中也=中村青司。そして伝説へ。