

「アウシュビッツ収容所の隣で、幸せに暮らす家族がいた」
このコピーだけで、映像を観る前から心臓をつかまれたような気分になる。
これほどまでに強い切り口を、これまで誰も気づいてなかったのか。と。
大量虐殺が行われている施設の隣で、芝生が生き生きと育ち植物園と屋外プールのある優雅な庭で談笑する大人と子供たちという狂気。
が、やつらは異常だ。とは思わない。
これは、われわれ人類全員に対する、「人間の他人への無関心という残酷」への警鐘ではないか。
今自分がのんびり映画をみている裏で、悲しい事件に直面している人がいるかもしれない。
育児に苦しんでいる人間がいる裏で、宴会で騒いで酒を飲んでいる人間がいるかもしれない。
アウシュビッツ収容所の隣で、優雅に過ごしている家族という圧倒的な狂気のコントラストにより、誰にでも大なり小なり引き起こしている「無関心の残酷」に気づかされる。そういう、かつてない恐怖体験をさせられる映画だったと思う。
まぁ、だからといって、自分が全ての人に手を差し伸べることなどできるはずもなく、
人間とは誰しも残酷な生き物だったんだ、ということをかみしめるしかない。
新作「育児図」を描き始めたころ、映画の予告を見て、これはアウシュビッツと所長の対比を描く映画ではなりながら、同時に、自分にとって自宅の中と外の対比を描いた者でもあると感じた。
「育児図」のテーマは限りなくこの映画のテーマに近いものだった。
制作のためにも、絶対に見なくてはいけない作品だと確信した。□
▼レビュー動画 よくまとまってます。