
個人的には、館シリーズの中でも、もっとも満足度が低かった作品だった。
「暗黒館の殺人」を読破した達成感に満たされている中、さあ次は何に「びっくり」させてくれるのか!?の期待値が、自分の中でものすごく上がってしまっていたことに対し、本作はターゲットを子供と大人とした、他のシリーズ作品とは異なる位置づけで描かれていたということもあって、ミステリーでもあるが、それ以上にジュブナイルという印象が強かった。
それはそれでよくできているとは思うのだけど、やや期待している方向がずれていたというか、読み切った後の達成感というか満足感が、物足りなかった。
複線と思われたところが、そうではなくてただの描写だったという箇所が多く、全体的に拍子抜けした印象だ。
例えば、手書きのHelp Usのメモに、ギミックが隠されていることを期待してみたが、結果としてとくにひねりも感じなかったり、失踪した母の行方は語られなかったり、個々に仕掛けられたギミックに、いろいろな想像をしながら読んでいたが、ほとんどそれが空振りで終わる感じだったのだ。
どちからというと本作は「館」シリーズではなくて、「囁き」シリーズに入れた方がよかったのではないかと感じた。
(注意。以下は、すべてネタバレの自分のためのメモ)

・びっくり館に住むのは、古屋敷龍平(祖父)と俊夫少年。
そして母に殺された俊夫の姉・リリカを模した腹話術人形。
・リリカは悪魔の娘=オーメンのダミアンのような存在
動物を殺したり目の色が変わったりする。
ということらしいが描写が薄くてそれが伝わり切れていない印象。
お姉ちゃんは悪魔だったらしい、というつぶやきはあるが、
実際はそんなことはなかったという方向に倒れるものかと思っていた。
それほど悪魔であったということへの描写が少なく、細い。
・祖父殺しの犯人は、リリカ人形にされた俊夫。
密室の中に残っていた俊夫=リリカ人形が祖父を刺し殺した。
俊夫は、リリカを溺愛していた祖父に人形にされているうちに、
リリカの悪魔が乗り移り、祖父を殺した。
⇒綾辻ワールドの王道。殺害の動機は「そういう人だったから」。
・リリカ、俊夫の父は、祖父龍平。
⇒綾辻ワールドの王道。実はパパは祖父。近親相姦。
・「びっくり館」の「びっくり」は、リリカの部屋につけられた28個のびっくり箱。
開け方によって隠し扉が開く。
⇒あまりびっくりはしなかった。期待していたのは、家全部がびっくり箱だったとか、本を読む人間自体が、びっくり箱の中にいたとか、全部ひっくりかえされるようなことを期待していたが、小粒の印象。