1位 NHK朝ドラ「寅に翼」
2位 NHKドラマ人間模様「夢千代日記」(昭和56年作品)
3位 M-1グランプリ2024
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・光る君へ
テレビドラマは嫌いではないが、たくさんのものを見る時間はない。
きっと「ふてほど」は面白かったに違いない。「地面師たち」だって。
多くのドラマを見ていれば目が肥えて、頭の中に序列ができてくるだろうから、そんな人たちから見たら「虎に翼」だって、中の下だとか、下の下だとかいう人もいただろう。だけど、自分にとっては「虎に翼」は上の上だった。
普段ドラマを見ていないせいで、稀に見た作品が輝いて見えていただけなのかもしれないが、そういう前提の上で改めて振り返ってみても、やっぱり相当優れたドラマだったと思うのです。
1つめに、働く女性、ジェンダーといった、まさに今の時代を象徴する切り口を、ドラマの中にしっかり盛り込んで物語を紡いでいるのがすごいと思った。今という時代の記録という価値もあるし、ぼんやりと見えていた働く女性の時代を、エンターテインメントとして見える化したことにも価値は高い。
さらに、このドラマの中心に描かれた原爆裁判は、ドラマ完結後、奇しくも日本がノーベル平和賞を受賞したことも重なり、平和を振り返るという切り口の価値も盛り込まれていたと思う。
総じて面白いドラマというのは、キャスト達の「言葉選び」にあると思う。
主人公たちに自分を重ねてドラマを見ていて、劇中で彼らが追い込まれたとき、自分だったらどんな言葉を返すかと考えてみると、都度絶句してしまったり、どうでもいいような価値もない言葉しか返せない自分がいる。そんな難局を乗り切るのに、ドラマの主人公はいったいどんな返しをするのだろうと見ていると、凛として我々が想像もできない言葉でトドメを刺してくる。そこに驚きや面白さがあり、目が釘付けになるのだと思う。
もちろんドラマだから脚本家が時間をかけて言葉を作り、紡いでいるのだが、もし時間があっても自分にはそんな言葉は思いつきえないという、面白いの先に、脚本家への尊敬もある。
人生って言葉のIFだと思うのだ。自分が仕事でもプライベートでも誰か、世界に向けて言葉を発する時、Aというか?Bというか?という選択肢を誰もがしているのだろうが、そのとき誰もとれない選択肢Cを発する人が、世界を大きく動かしていくのだと強く感じるのである。
今年は湯村温泉に訪れる機会があり、まさにそのタイミングで「夢千代日記」が再放送された。自分はこのドラマを知らなかった。そもそも、なぜ昭和56年もの古い作品を今再放送?と思っていたが、おそらくノーベル平和賞の受賞を経て再放送が決まったのだろう。湯村温泉に行く機会が無ければ見ることもなかったとおもうのだが、これが深いドラマであった。
日本海側の小さな厳寒の温泉街にある芸者の置屋を舞台とした群像劇だが、吉永小百合演じる芸者が、母の胎内にいるときに原爆で被爆したというエピソードを持つ。そこに東京で殺人をし逃亡中の芸者を追いかけてやってきた刑事、自殺に失敗して生き残った子連れの芸者・金魚、旅芸人を追いかける芸者・樹木希林、がんで余命いくばくもない芸者、偽物の医者、ストリッパー、置屋を地上げに来るやくざ....等々、どうにもこうにも屈折した過去を持った人間たちが集まり、それぞれの生きる姿を描く。
ドラマという虚構ではあるということを頭においていても、なんだか妙に不思議なリアリティ、においが噴き出している。
白血病で3年の命と言われている吉永小百合が健気に客の前で踊る姿は、本物の芸者と思うほどのなまめかしい色気があり、今なお活躍するその存在感はここにあったかと思い知った。いるだけで役ができているような、もともとこういう人なのでは?と思うほどの生々しさ、色っぽさが出ている。田中邦衛のような、どこまでが素でどこまでか演技かわからないものが出ていた。年明けから続の放送があるようなのでこちらも楽しみにしたい。
M-1は、毎年見ているし、今年がとくにすごかったというわけではない。
審査員が、がらりと一新。松ちゃんが出てこられなくなって、この機会に一新したのかとか思いながら見ていた。
昨年の決勝に出ていた令和ロマンやヤーレンズは、昨年の方がキレがあったように思う。やっぱり最初に出てきたときの衝撃や勢いって改めてすごいと思う。二組とも、密度が高くて早口だからリスニングができない、ネタをキャッチできないことが多くて、その後に出た真空ジェシカが、とても聞き取りやすくて、面白かったから、個人的には真空ジェシカに頑張ってほしかった。初見のエバースも、密度が高いのにわかりやすくて、いいなと思った。漫才はネタ以前に「聞き取りやすい」ということが、とても重要なんだと改めて思っている。
バッテリイズは、1回戦「名言」で衝撃を受けたけど、決勝「世界遺産」は、彼らの「あほ」に免疫ができちゃったようで、ネタごとに改めてあほだなあと感じさせるひねりがあったら優勝できたのかもしれないなと思って見ていた。
毎回思うことだが、漫才はM-1しか見ていないので、本当は1万組の中に、オードリーやサンドイッチマンのような人たちがもっといるのではないかと思ってしまう。オズワルドとかさや香は今も好きだし。優勝は彼らにとって一つの登竜門だと思うけど、もう好きかどうかは優勝とは関係ないもんね。一組に決めるというのが難しい時代にもなっていると思うし、総合的に、彼らの戦いを応援してます。□