高松で訪れたイタリアンDuomo。
孤独のグルメである。
が、五郎さんのように清々しくはいかなかった。
19:00。夕食の時間である。
店内は多くの客でにぎわっており、
テーブルの間を4,5人の給仕が忙しく行きかっている。
厨房にも5人の料理人たちがあわただしく動いている。
奥からは大声で話す声や笑い声も聞こえてくる。
おそらく、人気店なのだろう。
カウンター席に一人座り、ビールと一人分の前菜を注文。
その日の旅の疲れをいやすように、ビールが喉を流れていく。
美味い。
この店は当たりかもしれないと気分が盛り上がる。
が、それもすぐに曇り模様に変わってくる。
まず、高い。
一人でイタリアンというのはこんなに高かったっけ。
ビールに前菜、パスタを頼んだだけで3000円を超えた。
ピザやワインも注文すると、5000円を超えてしまう。
お酒を2杯、3杯と注文したら、もっと上がっていくだろう。
なんとかもう少し安く食べる方法が無いかを、探す。
メニューを見ると、店のコンセプトが書いてあった。
「当店は、いろいろなメニューを味わってほしいので、
ピザもHalf and Halfでお作りします。お声がけください」とある。
が、忙しそうな店員を呼び止め、「小さいピザできますか」と尋ねると、
「メニューにあるピザしか作れません!」と、
食べ終わったばかりの皿をすぐに持っていってしまう。
高い上に、とてもせわしない。やさしさも感じない。
店は、
多数の空腹の客の腹を美味い料理で満たすことを最優先に動いており、
個々の客へのホスピタリティは二の次にしているのだと感じた。
また、店を訪れる客の多くは二人以上でターゲットとしているのは彼らなのだろう。
一人で来る客の接客に注ぐサービスにはパワーを割いていないという印象も受けた。
要するに、「若い店員が、若い客をターゲットにした、若い店」なのである。
今の自分が店に求めているものは、もうただ腹を満たすことではないと気づいた。
別に空腹を短時間で満たしたいとは思っていない。
一人でも、二人でも、時折店員と他愛もない話をしながら、
料理を少しずつ、ゆっくり、静かに愉しむ。
店の方は、客の嗜好や表情にまで目を届かせて、
ゆっくりと憩いの時間を作っている。
そんな場所を自分は求めるようになっている。
知らず知らずの間に、店と自分のあいだに隙間ができ始めていた。
ステージが変わったという事か。
少し前は自分も、そこにいたと思うのだけど。
もうここにはいづらくなってきたなと少し感傷的な気持ちになる。
セブンイレブンでビールとピスタチオを買い、部屋に戻り静かに気持ちを補正した。□