★狭さの美学

 

俵万智「短歌を読む」岩波新書

 

「長編小説でなくとも、ミニサイズの小さな感動にまで、
  伸縮自在に対応できるのが短歌の強み」

 

短歌というものの意義や目的がシンプルにすっと入ってきた。

 

肉親が亡くなった悲しみを日記ではなく、あえて、
短歌の57577の小さなフォーマットに詰め込むということの宇宙

 

ここに、自分がこれまでに見て来た個々の制約が、
今、美となって、つながっていく爽快感があった。

 

ほぼ日手帳の1日1ページ
 どれほどドラマチックな一日であっても。どれほど退屈な1日であっても。
 必ず1ページに、その日の出来事を書きとめている。
 無駄な表現を極力避け、ことばを選び1ページに1日を収容するのは短歌と同じだ。

 

ほぼ日「今日のダーリン」(糸井重里
 27文字40行。「ルール」があったほうが、「品質」についての言い訳ができる。

 

・アトリエ新聞&二紀大阪新聞
 A3の2ページの紙面の、個々の記事。
 狭い紙面に、いかにして情報を埋め込むか。その戦いはこれまた短歌につながる。

 

・映画「ローグワン」のラスト5分の詰め込み
 デススターの設計図のバケツリレー。
 最後に手渡されふりかえるレイア姫の「希望です」という一本じめからの、
  流れ出すエンドロールとメインテーマ。

 スラムダンクの山王戦の逆転の数秒の描写もつながるな。

 

ドラゴンクエストのメモリ
 わずか64kByte。カタカナが全部入らず「ク」がない。
 「ダークドラゴン」を「ダースドラゴン」にした。
 これほどの制約、緊張感のあるゲーム作りがかつてあっただろうか。
 逆にだからこその、あの名作が今も生き続けている理由なのだろう。

 

・虎谷書店の陳列
  狭い小さな店舗の陳列スペースの使い方に、美学を感じる。
  ただ新刊を平積みするのではなく、埋もれている推しの名著を、
  限られた陳列スペースに上手に陳列する。狭いからこそ、陳列は美しくなる。

 

・お弁当
 小さな限られた面積のお弁当箱に、ごはん、おかずに思いのたけを詰めて
  盛り込んでいく美学。お弁当アートという分野も存在する。ここにも宇宙がある。

 

・盆栽

枯山水庭園

・御神輿

M-1グランプリの3分間

 

要するに、狭いから、足りないから、という制約こそが、
かえって作品をとがらせ、輝かせているという事実である。