1位 「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈
2位 「あなたはなぜ雑談が苦手なのか」桜林直子
3位 「BUTTER」柚木麻子
4位 「生きることば」俵万智
5位 「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」ブレディみかこ
6位 「足利義政と銀閣寺」ドナルド・キーン
7位 「短歌をよむ」俵万智
8位 「日本のデザイン」「デザインのデザイン」原研哉
9位 「たんぽぽの日々」俵万智
10位 「多動脳」
次点
「ニシアフリカトカゲモドキ大全」
「怪談という名の小説怪談」
「タローマンなんだこれは入門」
アンパンマンシリーズ
「歩く マジで人生が変わる習慣」池田光史
コロナブックス「般若心経」
いい本にたくさん出会えた1年だったと思う。
成瀬~は、本屋大賞受賞で話題の一冊だったが、個人的には本屋大賞だから読む、という読み方はあまりしない。そもそもこの本が、発売され書店に平積みされていたとき、この本の耳に心地よいタイトルと装丁のイラストレーションに強い響きを感じて手に取った。結果、とても面白かったのだけど、すごいと思ったのは、滋賀県の西武大津店の閉店という、地元の人にとってはとても大きな事件・悲報でありながら、多くの他人にとっては知りもしないし、関心もない出来事を、第三者にも同じ目線で事件・悲報として共感させてしまったその表現力である。自分にとって、とても大切なことって、ただの主観であり、その主観を第三者の他人にも共感させることってすごく難しいのだけど、この本はそれを実現してる。自分が面白いと思って描いているモチーフを、他人にもどうやって面白いと思ってみてもらえるか、を自分はずっと悩みながら絵を描いているのだが、そのヒントがこの本にあったのだ。
BUTTERは、ふだんミステリーばっかり読んでいる自分が珍しく手に取った「文学」だが、その濃厚さにひるんだ。1/2くらいやっと読んだ段階で、まだ半分もあるのか、とエベレストに登っているような途方もない高さを感じた。いろいろなものを見立てているタイトルが秀逸だし、人間の深く深く深いところまでを文字で描き出しているその表現力に迫力を感じた。あとで直木賞候補と知って、え、直木賞受賞じゃないのか。じゃあこれよりすごい作品があるってこと?と、愕然としてしまう。でもこの作品は事実上の直木賞だと思う。
ぼくはイエロー~は、FM802浅井氏のすすめで手に取ったが、なんとなく読み始めて、引き込まれ、一気に読んでしまった。これも成瀬と同様、他人の生活なんてものは、多くの人には関心がないことなのだが、イギリスで子育てをするみかこさんの見て来たものが、まるで自分のことのように、自分の目でみたことであるかのように、頭に流れ込んでくるのがすごいと思った。読みはじめは、さくらももこのエッセイのような、ゆるい印象だったが、人種のこととか、育児のこととか、国のこととか、深い深いところに切り込んでいく。その場所で生きている人間の生活のにおいがただよってくる迫力がある。
今年は新書も数冊手に取ったが、読んだ本は全部素晴らしかった。以前、サライで新書特集をやっていて、あれやこれや読んでみたい本があったと思うが、今思うのは、自分のこれまでの人生に全く関係がなかった分野を手に取ってみても、入ってこない(入っていく時間や体力がない)という事だ。親書は、自分が今前を見て進んでいるとき、その視界に入っている範囲の何某かを補強するのに最適な本だと思うが、突然背中の方を向いて、そっちに手を出しても、もはや、それだけ手を広げている時間が無いのである。それならば、今見ているもの、ことの方を補強する方に手を伸ばすのがいいと思う。
あなたはなぜ雑談が苦手なのか。は、良い雑談とは何かをずっと考えていて手に取った本だったが、自分のこれまでの人生の苦しみの源を的確に文字化した本で、自分の心の処方箋としても強烈な効力を持った本だった。人生が変わる一冊とかよく見出しで見るが、この本は自分にとってそういう一冊になるかもしれない(何度か読み返してみたい)。
俵万智さんの本は、ことばが強い。さくさくと気持ちよく刺さってくる。頭のいいひとの文章ってこういうものなんだなあというのを、読むたびに思い知る。たんぽぽの日々はとくに育児の初期のころに苦しんでいた(いる)自分にとっての救いのことばがあり、心から助けられた。それをきっかけに、短歌や言葉に関する俵さんの本を何冊か手に取ったが、どれも読みごたえがあり、ことばのプロフェッショナルってこういう人なのかという事を思い知った。
原研哉の日本のデザインは、日本の美意識について触れられていて、そこから、茶室の「空っぽの美」に感動して、ドナルド・キーン氏の足利義政に流れていったが、やっぱり自分は洋画を描きながら、日本の美を想っているのだと再認識した。日本は美しい国だよ、改めてそう思う。
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