「むかしむかしあるところに死体がありました」青柳碧人著 双葉社
昔話×ミステリーという説明に加え、表紙が五月女ケイ子氏のユーモラスなイラストレーションであったことが、良い意味で本書への期待値を大きく下げていたのです。
昔話のパロディとしてのB級ミステリーのようなものだと思って読んだのですが。
めちゃくちゃおもしろい!
じゃないですか。
一寸法師、つるの恩返し、花咲かじいさん、浦島太郎、桃太郎。
誰もが知っているむかしばなしをベースにしながら、そこに殺人事件が起こり、どの話も見事に「本格ミステリー」として納得のいく着地をさせている。
むかしばなしで語られていなかったリアルな部分への踏み込みをしっかりと描きながら、ミステリーとしてもファンの期待を裏切ることなく完成させている。
短編でありながら密度と質がとても高い。
わずか30分でありながら劇場映画のような密度を持つ「ルパン三世1st」のようなクオリティである。
つるの恩返しをモチーフにした「つるの倒叙がえし」のどんでんがえしには脳震盪を起こした。
桃太郎をモチーフにした「絶海の鬼ヶ島」は、鬼ヶ島をモチーフにアガサ・クリスティやっちゃってるし。
シンプルで深い。間違いなく、ミステリーのホームランです。□