映画 「デトロイトメタルシティ」 (5点/10点)

原作に飲まれてしまっている。


そんな印象。


確かに松山ケンイチの変貌振りや、実演される「SATUGAI」等は見所ではあるかもしれないが、そのインパクトだけでは映画1本はもたない。


笑いとドラマの不連続や演出の弱さ等は、やっぱり原作に寄りかかりすぎたか、意識しすぎたかな、と感じる。


「ポップな音楽をやりたいのにデスメタルバンドをやらされている主人公」の葛藤の様や、変貌振りの面白さだけを借りて、原作から離れた一つの映画としてリメイクしてしまってもよかったのではないか、と思う。


遊園地の戦隊ショーにクラウザーさんが乱入するシーン。
クラウザーさん一人が吼えても、なんだか全然インパクトがないんだよね。
例えば、クラウザーさんが現れた瞬間、突然首都消失みたいな黒雲が空全体を覆って、血の雷雨になる、くらい荒唐無稽な演出が欲しい。
あの程度なら、デーモン小暮閣下が吼えているのとインパクトに大差がないんだよね。そんなのはテレビで散々見てきてしまっているから。それ以上のものがないと驚けない。


松雪泰子演じる女社長が主人公の部屋をデスメタルに作り変えるシーン。
例えば、ハンディカメラでの撮影を行い、実際にポップな部屋をデスメタルに作り変えてしまうまでの全過程を映し、それを早巻きで魅せるなどしても面白かったろうに。
要はそういう荒唐無稽さ、原作を凌ぐクレイジーな演出を持ってこないと観客は驚かないと思う。


あの「容貌」だけで映画を支えるにはきつい。


物語や演出も破壊しまくって、映画自体もデスメタルにして欲しかった。□