彩りについて

僕らはおしゃれをする。

僕らは食卓に花を飾る。

きっとそれは、日日続いて行く、厚く、重い日常を、

少しでも非日常で彩ろう、というささやかな抵抗なのだと思う。

「彩りはどこまでもさりげなくてはいけない」

あたかもそこにずっと前から咲いていたスミレのように。

 

先日出勤時、歩きながら電気カミソリで髭をそる男性を目撃した。

ついにここまできたか、と思った。

身だしなみを整えることも、自らに彩りを与え、

世界に向けて非日常を還元する尊い行為である。

彩りはどこまでもさりげなくてはいけない。

それがたとえ作りものの彩りであったとしても。

「彩りが作りものであることは決して人に見せてはいけない」

 

例えばドラマで、美しい女性が涙を流す感動のシーンがあったとする。

その直前に女性が目薬をさすシーンが入ったとしたら....どうだろう?

ドラマは、虚構である。

カメラに映っていない舞台裏では、女性は化粧をして、

目薬を差しているかもしれない。

それでも作り物であることを僕たちは忘れて、

カメラの中の美しい女性の涙を、その彩りを見たいと願っている。

だからこそ舞台裏は見せてはいけないのです。

たとえ虚構の中であっても、

彩りはどこまでもさりげなくあらねばならない。そう願います。□

今日の日本酒

獅子の里 旬
(石川県・加賀市山中温泉/松浦酒造株式会社/評価:8点)

「獅子の里」加賀・山中温泉の酒蔵|松浦酒造

アトリエでの制作が終わった後に通う大好きな居酒屋で
強くおすすめされたお酒である。
知らない銘柄でしたが、これがまた美味い。
しっとりとした静かな空間で味わう日本料理にぴったり
なのであった。流石大将がこだわりにこだわって選んだ
銘柄である。おもわず唸ってしまった。
石川県にもこれほど美味いお酒があるとは。
日本酒の世界はまだまだ深い。クエストは続く。□

 

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激突!

20:30。自転車での帰り道。
いつもの闇を40分ほど走る。
ある地点で1台の自転車を追い越し、
その先にある坂を一気に登りきった。
するとすぐ後ろから自転車のライトが自分を照らしている。
先ほど追い抜いた自転車が自分の後ろにぴったりとつけて
きているようだ。
思わずスピードを上げ、ついてくるライトを振り切った。
しかしすぐにまたライトが後ろから自分の足元を照らす。
スピードを速めても遅くしても自転車はぴったりついて来た。
20分ほど走っただろうか。
やがてそれは不安に変わった。
いつもはゆったり走る自転車なのだが、かなりスピードをあげた。
それでも自転車はぴったりと自分の後ろをついてくる。
................怖い。
どこまでついてくるのだろう。まさか自宅までついてくるのでは...。
やがて横断歩道の信号待ちで止まった。
後続の自転車はぴったりと自分の後ろにとまったようだ。
なんだか恐ろしくて後ろを振り返ることができない。
青信号に変わったとき、自転車を手で押して歩くことにした。
後続の自転車を追い越させようとしたのである。
24~5位の男が自分をちらと見て追い抜いて行った。
あいつか。と思い、その後を見ながら自転車にまたがる。
今度は自分が彼を追いかけるような形になった。
後ろから彼を照らす我が自転車のライト。
男は不安そうに後ろを振り返ってくる。
お互い「いったいどこまでついてくるのだ、こいつ」という状態になり
更に延々と走ることになった。
互いに悪意はない。
本当にただの偶然なのである。
ただ20分~30分にわたる自転車走行において、
全く同じ方向を走るという行為はときには事件性を互いに抱かせてしまう。
相手が女の子であったとしたら「ストーカー!」と叫ばれたかもしれない。
こんなことが世界ではきっと頻繁に起きているのだろう。
だが1つ曲がり角を間違えたとき大きな事件になったりするのかもしれない。
何も起きてはいない、だが何かが起きてもおかしくない怖さを感じた。□

今日の音楽

コーネリアス 「Mellow Waves

なんと前作「SENSUOUS」から11年ぶりの新作である.....!
もちろん途中で「攻殻機動隊」とか「デザインあ」の
サントラを手掛けていたりはしていたけれど。
本当に待ちに待ったオリジナルアルバムである。今回はなんとボーカルが!!
この11年を噛み締めるように。創作の友として。じっくり深く聞き込みたい。□

 

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居酒屋の帰り道。ふと鏡の中の自分を見る。

期待を大いに裏切るみすぼらしい男が一人。

誰だお前?!

愕然とする。なんという醜い姿だろう。

もはや唯々、心を磨いていくしかない。

この体が朽ち果てどんどん老いさらばえ

どれほど汚くなっても、

この心だけは!心こそは!

いつもぴかぴかでいなくてはいけない。

いつもぴかぴかに磨き続けなくてはいけない。□

アオハルとアカアキ

以前も触れたが職場の社員食堂が変わった。

5月に10年以上続いた給食会社が新会社に変わり、
華々しいスタートを切った。....はずであった。
だけど以来、給仕がひどく遅くなってしまった。
行列は一向に進まない。
更に、お盆を手にようやく奥にたどりつけば品切れ...。
わずか数日で最初の大騒ぎは、一気に静かになった。

とはいえ社員食堂である。
他に食事をする場所は無いから客は来る。つぶれることはない。

前の給食会社の方がよかったなぁ......。
まだ1か月である。ちょっぴりノスタルジーにふけるには早すぎる。
それでもこの変化に意味はあったのか、とまで考えながら、
黙々と食事を済ませる。その刹那、思い至ったのである。

これが「デビュー」というものではないか。

前の給食会社が初めて我々の前に現れたときも、
おそらく行列に手が追いつかずパニック状態になり、品切れ続出。
みたいなことになっていたのではないかと思うのである。

そして引退するときは、
デビュー以来の失敗と反省と工夫をコツコツ積み上げ、
最高潮に磨き上げられた状態だったのではないだろうか。

比べてはいけなかったのかもしれない。

人の成長も組織の成長も。デビューは青く、引退は赤い。

時間をかけてコツコツ成長してくれることを期待して
暖かく見守ろうと思う。

きっと僕もそうやって許されて生きてきたのだろう。□