夢十夜 「第三夜」

こんな夢を見た。


友人とその奥さん、そして自分を含む3名が旅行をしている。


イラク旅行である。


時間は正午くらい。
廃墟のようなコンクリートむき出しの建物が左右に並び、砂埃に覆われた廃車が路上に放置されている。空気は渇いており、地面は砂漠の砂で覆われている。人は全くいない。
ただそこに立っているだけで数分後には蜂の巣にされるような耐え難い緊張感が漂っている。


3人は逃げるように近くの雑貨屋らしき店に飛び込んだ。
殺風景な店内は廃墟をそのまま店にしたような感じで窓すらない。装飾なども全くなくコンクリートもむき出しのままだ。店内であっても少しも安全だとは思えない。
砂埃で覆われたショーウィンドウの中にはすっかり干からびたり痛んだ食品などが並んでいる。
が、その中でも作ったばかりと思われるくらい鮮度の高い揚げパンがお盆の上に載せられているのを見つけると、空腹だった自分はそのパンを掴み、前から後ろから勢い良く食べ始めてしまう。


店員の一人である人相の悪いオヤジが全く理解できない言葉で叫んでいる。
どうやら金を払えと言っているようだ。値段をなんとか聞きだしてみると300万ゼニーとのことであった。
アメリカドルにすると300ドルくらいだ、と友人が教えてくれた。
払えない金ではない。が高い。手元の財布を見るとやっぱりそんな金は入っていない。とたんに冷や汗が噴き出した。殺される。
とっさに友人の奥さんが「イラクのATMを使うためのこの鍵を彼らに見せたら逃げられる」と鍵を貸してくれた。それを見せると彼らも納得したようでひとまずは開放してくれた。


逃げるように店を飛び出しさっきの通りでバスを待った。
やがてバスは来るが、この先で激しい銃撃戦があって出発ができないという。
バスの中には中学やら高校やらの友人がたくさん乗っていて、雑貨屋でパン代を払えなかったことを告げると、そんなところで物を買ってはいけないとからかわれる。


やがてバスは激しい銃撃戦の中を進みだしたが、すぐ近くのビルで大爆発が起こった。
あとで教えてもらったところその爆発によってイラクのシンジケートの一つが壊滅したらしい。そしてさっきの雑貨屋も実はそのシンジケートの一味であったことがわかり、揚げパンの代金を払わなくてよいことになった。


命の危険は少しも去っていないのに何故か非常にほっとしている自分。□



●→第二夜