礼節謙譲

静かで上品なお店でひっそりと飲む。

歳とともにお酒の飲み方もゆっくり変わってきている。

飲み方はゆっくり自然に変わっていくものです。

理屈で変えていくものではないと思うのです。


先日、懇意にしている大切なお店に行くと、

髪を染めた20代前半と思われる若いカップルが

カウンターに座っていた。

店に入ったときから異質な空気を感じたのだが、

それはすぐに現実となった。

......五月蝿い。のです。

 

とくに男の方が。


隣の女の子を差し置いて、ずっと携帯電話で大声で話したり、

カウンター越しに大将の年齢を聞いたりしている。

こちらの声がかき消されてしまうほどの音量で。

空腹を満たすためにがつがつと食べているから、

帰りしな会計が2万円くらいになっていたように聞こえた。


彼らが去った後、大将に彼のことを聞いてみると、

「大人としてのステータスをあげたいから来ている」

とのこと。

.....理想はわかる。

だがおそらく彼はこの店にいる間、何一つ学べていないように感じた。

彼が口で言う理想の姿は、居酒屋の中では手に入らないのだと思う。

社会に出て、大嫌いな上司と何年も仕事を共にしなくてはならないような

砂漠を歩くような日日から本気で逃げるとき、僕らは初めて酒の味を知る。


観念では人間は変われないのだよ。


焦らなくてもいいではないか。

 

個展の初日を迎え、ちょっとした祝杯を兼ねた大切な酒でもあったから、

ちっくと、いらいらしてしまいました。


春から近所に大学が出来て、街は元気になってきたように思うけれど。

若い人には、まずは礼節謙譲を大切にしてほしい。そう切に願います。□