忘年会

初天神の居酒屋で呑む。

よく前を通っていたが入ったことの無い店だった。
素敵な店構えの渋いお店でとても楽しみにしていた。
入口にたくさんの日本酒の銘柄が掲示され、ここは
間違いない!と確信していたのだが。

料理は美味い。
空間も落ち着く。
店内もにぎやかだ。
だが.....。
大将の人柄が悪かった.......。

店内はカウンターのみ。
店員は大将(30代半ばくらい)とおかみさんの二人。
僕らが入店した時間は大混雑の時間帯だった。
大将は忙しさのあまり大声でおかみさんを怒鳴っていた。
同時多発的に押し寄せる客のわがままな注文に溺れて
いたことは理解する。だがそれが居酒屋というものだ。
僕はその怒鳴り声を聴いた瞬間、料理の味など、もう
どうでもよくなってしまったのだった。
いくら美味しかろうが、空間が豊かだろうが。台無しである。
そんな見苦しい舞台裏を客の前で見せてしまうその足りなさ。
客に当たり散らすことができないがために、おかみさんに
あたり散らしているようにすら感じたのである。

大将たる者、どんなに忙しかろうと、てきぱきと楽しそうに
調理して魅せて、逆に客それぞれの仕事に対する姿勢を、
間接的に叱りつけてほしい。
客は、それくらいの願いすらもって居酒屋に行くのである。
むしろそれくらいの期待を背負えないようであれば居酒屋を
やる資格は無い。

居酒屋は心の銭湯でなくてはならない。
大将の責任は重大なのである。それだけの覚悟がいる。

察するに、おかみさんは大将の母親なのだろう。
そして大将は、先代の大将の息子といったところなのだろう。
先代の大将が引退されたことをきっかけに、息子が大将となり
店を引き継いだのだろう。この空間は、きっと先代の大将が
こつこつと作ってきたものなのだと思う。
このままだと、きっとこの大将は、先代の大将が作ってきた
この貴重な酒場遺産を台無しにしてしまうような気がする。

どうかこの酒場愛好家の小さな声に気付き、
大将が心を入れ替え、先代大将を超えるほどに、
更に素敵な店にしていってくれるよう、切に願うのである。
広島の名酒「宝剣」をいただきながら....。□