大人のいうことをきかない世界

かつてはどの世界も「言ったもん勝ち」だった。

世界のパイオニアたる亜米利加がギターをきゅい~んと奏でて「Baby!」と叫べば、出遅れた子供たちはそれを追うように、わけもわからず「Baby!」と叫んだのだった。
映画や音楽、そしてビジネス。どのフィールドでも先輩たちが作ってくれた道筋を素直にたどって歩くことで僕らは安心して前に進むことができた。
でも、そんな子供たちも気付けば青年になり、かつての大人は老人になった。
国家も。
組織も。
人間も。
大人は老人になり、子供は大人になる。
世界は移ろっていく。
でも移ろうということに従わず、しがみつくものがいる。
むしろ誰もがしがみつく。
ずっと今にしがみつきたい。これがぼくらのサガ。
亜米利加は、かつての亜米利加の栄光に。
技術立国は、かつての技術立国の栄光に。
政治家は、かつての政治家の栄光に。
課長は、かつての課長の栄光に。
しがみつきたい。
どうしても引き返せない時間へあらがうために、老いを正当化する「元老院」なんて組織をつくってまで、しがみつこうとする。
歳をとったぼくらがすべきことはなにか。
それはしがみつくことではなくて、次にバトンを渡すことであると思う。リオ五輪での日本陸上の美しいバトンパスのように。
「かつての美しさ」ではなくて「今だからこその美しさ」を探すことをしていきたいものです。□