今日の一冊

 

「屍人荘の殺人」今村昌弘著 東京創元社(7点)

 

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(注)以下、ネタばれ前提で書きますのでこれからの人は絶対に読まないように!!

 

 

 

 

 

 


神紅大学ミステリー愛好会会長・明智と部員・葉村の二人が、映画研究部の夏合宿に参加する。
彼ら含め「紫湛荘(しじんそう)」と呼ばれるペンションに集まった男女10数名。
合宿とは名ばかりで、本当のところはペンションオーナーの息子である映画研OBが、後輩に女の子を呼ばせ合コンを企てるといういかがわしいイベントであった。

「へんてこな名前のペンションだな」と思いながら読み進むと、事態はとんでもない方向に展開する。

山の向こうのライブフェスティバル会場で行われたバイオテロにより、ゾンビが大量に生み出されるのである。
「紫湛荘(しじんそう)」はゾンビに取り囲まれ「屍人荘(しじんそう)」となり、外部から犯人が入って来られない、前代未聞の「ゾンビによるクローズドサークル」が完成する。
本作は、初のゾンビによるクローズドサークルによる本格推理小説なのであった。まずこの点にびっくりする。

また、主人公は明智と葉村のペアであると思っていたが、明智はなんと序盤でゾンビに喰われてしまい、後から現れた剣崎比留子が明智になりかわり、葉村とペアを組むことになる。

本格推理として、しっかり全てに伏線と説明がつけられている点は見事である。
読後に振り返っても、やっぱり解けなかったとは思うが、作者の挑戦を受け止め、メモを片手に腰を据えて読むべきミステリである。

個人的には、序盤で明智含め、ゾンビの犠牲になった仲間達が出てくるが、彼らの誰かは生きていて、謎解きやどんでんがえしがあるのだと疑っていた。
だが結局、明智も他のメンバーも全員ゾンビになってしまっていた。序盤であれだけキャラ立ちさせた明智を、ゾンビにしちゃった。というのもびっくりであった。

一ゾンビファンとしてロメロ監督につながる「カメラを止めるな」の次なる和製ゾンビの優れた新作がリリースされたことに喜びを感じる。□