はかなさを愛でる。

自宅のHDDレコーダーが満杯になってしまった。


ビデオデッキを使っていたころはビデオテープ3本、計18時間で十分回せていたというのに。200時間も録画できるHDDレコーダーが満杯とは。


録画可能時間に制限があるとそれがプレシャーになってかえってきちんと見るものである。が、200時間も録画可能となると録画することに安心しきってすっかりテレビを見なくなってしまう。便利なのか不便なのかよくわからない。



最近その様を冷めた目で見ている。



「そもそも録っといて何になる?」と思うようになってきている。



好きなドラマはDVDに吐き出して保存したりもしたが、一度も見直したことがない。
人生は早い。そんなものふりかえっている余裕など実はほとんどない。のであった。


映画のDVDなどもしかり。買うだけ買って満足して、実はそう何度も見ない。
というか見ている余裕がない。世の中には次々に新しい映画が生まれ出ているし、まだ見ていない古典の名作もつもりまくっている。同じものを何度も見ている暇など実はほとんどないのである。


そんなこんなをひっくるめて、最近はHDDに録画したものなど見終わったら消去してしまったほうがいいのではないか。と思う。



保有していてはいけない。



楽しい。面白かった。ずっととっておきたい。そういう思い出を二度と出会えないかもしれないという切なさと共に噛み締めて、あえてサヨナラする。いつかまた再放送やらなにやらでの再会を願って消去するのである。すると楽しかった記憶がより強調されて脳にしみこんでくる気がする。


桜の花が散っていくようなはかなさでコンテンツともおさらばする。

そこに美学があると思う。□