上野公園散歩

春分の日である。


東京都美術館で開催されている「オルセー美術館展」を見学に上野公園に出かけた。


が。あまりにもたくさんの人が並んでいるのに圧倒され、見学は断念せざるをえなかった。
正直なところ、このような大混雑の中では絵などとても見れたものではない。それくらい混んでいた。これでは周りの人の頭を眺めて疲労するだけで終わってしまう。お金と時間の無駄である。


日本人は印象派絵画が好きである。さらにパリが好きである。なのでオルセーだのルーブルだのの言葉がついた展覧会は特に混雑する。今回もしかりである。
だが、個人的には今回のオルセー展には、必見の絵は来ていないと思っている。
2年ほど前にパリのオルセー美術館に行ったのだが、そのときやっぱりオルセーは本場に行かなくてはならない。と強く感じた。
旧駅舎を改築しているその建物そのものも素晴らしいし、保有している絵画の数は世界屈指である。セザンヌの部屋。ゴッホの部屋。ミレーの部屋。ドガの部屋。その一部屋だけで展覧会1個がゆうに開催可能なくらいなのである。それが数百円のレベルで見学できる。
今回の東京都美術館の企画は本場の復習レベルで見ておこうくらいなものであったが、チラシなどで見ている範囲では、あまり復習もできそうにないと思っていた。それに加えてこの混雑である。あっさりと見学を断念したのもそういうところから来ているのだろう。平日あたりに機会が取れたらまた来てみよう。


先日東京では早くも桜開花宣言がされたようである。祝日、天気、桜。そのあたりが相乗効果となり人が押し寄せているのだろう。
実際、桜はちらほらと咲き始めていて、早くもフライング部隊がそのわずかな桜をサカナにして花見を始めている。気づけばもう春なのである。


美術展を見損ねた私は東京藝大方面からぐるりと回り、花見に酔いしれる人々とわずかな桜をぶらりと眺め、西郷さんに挨拶した後帰宅した。こういう時間もたまにはいい。


来週か再来週には私も酒を持って彼らの仲間となっているのかもしれない。□