読書 「檸檬」 梶井基次郎著 (8点/10点)

線香花火のような小説群である。


絵というものを活字で表現するならばこのようになるのではないか。
文字なのに、においや重さが五感に感じられる。
絵が自然に脳に焼きつくような文章だ。


テーマは筆者を取り巻く日常の中の些細な事柄をとり挙げているが、全体的に憂鬱感がまとまりついている。
脳髄にいつも重くのしかかっているようなメランコリー。
松本俊介や靉光の絵を見ているようだ。池袋モンパルナスのにおいがする。


当然好きな世界である。が、やっぱり元気なときに読みたい。□


●前回読んだ本→「雷の季節の終わりに」