なんといっても佐藤浩市のうまさ。に尽きる。
素の佐藤浩市。
劇中の三流役者・村田を演じる佐藤浩市。
三流役者・村田が劇中劇で演じる殺し屋デラ富樫を演じる佐藤浩市。
この階層が本当に見事に演じ分けられている。これは本当にすごいことだと思う。
机上にどかっと座り、ナイフをべろりとなめてボスを睨む村田のやりすぎな演技。
そして自分が演じてきた殺し屋の映像を目にしたときの、あの純粋に芝居を愛していると伝わってくる村田のあの目。
ここまでで映画はフィナーレでよかった。これで終われば満点だったろう。
が、その後クライマックスに差し掛かるや否や、とたんに色を変えた馬鹿騒ぎに変貌。
これまで緻密に作られてきたマフィアと偽者の殺し屋の絶妙な緊張の共存バランスが完全に崩壊する。
本物のデラ富樫と村田の不条理な戦いや、ボス西田敏行と愛人深津絵里の強引なハッピーエンド。
はっきりいってこれらの破壊活動は全て蛇足だと思った。
それまで続いていた緊張感が突然ぷっつりと切れて、あっけなく連続ゴールを許して敗北したサッカー日本代表みたいだ。
もったいない。本当にもったいない。□