自転車通勤のてつがく。

1.

若者が、ものすごいスピードで僕の自転車を

追い越して行った。

とてもついていけない速さ。

しかし、ちんたらと進んでいった先の赤信号で、

彼は立ち往生していた。追いついてしまった。

人生、差なんてそう簡単につくものではない。

一時的に駆け足をしてみたところで、

どこかで追いつかれてしまったりするものだ。

それでも、決して追いつけない人たちがいる。

赤信号でも突っ走る人。である。

彼らには狂気がある。狂っている人間には

絶対に追いつけない。

追いつくためには、自分は更に狂わなくては

ならない。

アバンギャルドは、狂の中の狂にある。

 

2.

前方を走るママチャリ。前部後部に子供を乗せる

椅子がついたごく普通の自転車。

運転するのは年配の男性。

だが、この自転車に追いつけない。

速い。

どうみてもただのおっさん。しかし、速い。

彼はきっとアスリートだったのだろう。

現役を引退しても一般人を凌駕するような力位は

ゆうに持ち合わせている。

だが決してそれを口にはしない。行動だけで出す。

ここに美学を感じる。

「力を隠すもの」は格好いい。

 

3.

1年も通っているいつもの道。

なのに、ふと郵便局を発見。

こんなところに郵便局があったのか。

まったく気が付かなかった。

毎日見ている、通っている道であるのに。

それでも、見ていない。見えていない。

「日常」なんてない。

いつも何もかもが「スペシャル」なのだ。

スペシャル」はそこここに転がっている。

毎日を「日常」にしてしまっているのは、

僕らの閉じた心なんだね。□