本番ノススメ

先日電車の中で隣に座った外国人に突然話しかけられた。
どうやら堺筋本町に行きたいらしい。
堺筋本町に行くためには淡路で乗り換えなくてはならないが、この電車は先ほど淡路を出発して梅田に向かって突っ走っているところだった。
次の十三でいったん淡路に戻り、乗り換えるように筆談と小学生英語で何とか伝えきった。

先日仕事でアメリカからやってきたビジネスパートナーに向けてデモを行った。
日本語ならばある程度説明はできるので、大丈夫だろうとたかをくくっていたが、いざ説明を始めてみると全く言葉が出てこない。英語の分かる日本人の方にフォローしてもらってなんとかデモを乗り切った。

これらの経験を通じ、やはり「本番」に臨むというのはとても貴重な経験だと思いました。

「練習」は誰も見ていないし、とがめないから、甘えが生じてしまいます。
「練習」はいくらやっても「練習」であって「経験」にはならないように思います。

人が見てる。失敗しちゃいけない。成功したい。恥をかきたくない。といった気持ちの中で、なんとかうまくやろうと真剣にもがき、「本番」という門をくぐり抜ける。これで初めて、経験が体にしみこむと思うのです。

思えば、絵画制作も同じで、スケッチブックの上に下絵を描いているときは、やっぱりゆるく描いている。誰にも見せないから。
でもコンクールに出すとか、個展で発表するとなると、一気に緊張感が高まります。なんとかして人に見せられるものを描かないと、ともがくのです。

「本番」を乗り越えるときは、いつも見苦しくもがいていて、かっこわるいかもしれないけれど、それをたくさん経験してきたた人こそが、なんだか威風堂々としていて堅牢に感じます。

最近、ようやく「失敗する恐怖」よりも「経験できた嬉しさ」が勝るようになってきた気がする。□