漏らす人

「わたし、来月の20日で退職するんです」

通院を始めた歯医者で、次回の予約を取るとき、歯科衛生士の女の子がそう告げた。

そして、

「予約が詰まってまして.......次回6/20の18:30でいかがでしょう」と続けた。

少し脳が揺れた。
なんだこの会話。
退職することを患者の僕に伝える意味があったのだろうか。
僕はこの歯科に通院を始めてまだ3回である。そして治療はたぶん次回が最終回である。
まだ2回しか会っていない歯科衛生士はいつもマスクで顔すらろくに覚えていないし、ましてや私的な会話をするほど仲良しになっていたわけでもない。そんな僕にとって、歯科衛生士の退職は事件ではない。

最後の患者はあなたです。とでも言いたかったのか?なんて解釈もできそうだけど、まあ前述のとおり、私的な会話すらしたこともない歯科衛生士に告白をされるわけでもないし。そもそも、これまで平日の予約が続き、仕事を終えた後にダッシュしていたので、ほとんど遅刻していて、むしろこの歯科衛生士には嫌われていたと思うのです。

結論として「誰かにいいたかった」のだろうと思うのです。それほど彼女にとって、退職というのが大きな決断や事件であって、誰にでもいいから、漏らさずにいられなかったのでしょう。

全く別の仕事に挑戦することを決めたのか。結婚でもして専業主婦になるのか。それともまた別のことか。
人生いろいろあります。
なにはともあれ、思うことに挑戦してがんばってほしいです。

あ、もちろん僕の歯の治療は最後まで手を抜かずしっかりお願いします。□