花火大会

花火大会にとんと行っていない。

東京湾晴海ふ頭の花火大会が開催されていたころは毎年必ず心待ちにして友人らと足を運んでいたものだ。
だが、ふと気付けば、以来久しく花火大会に行っていない。
毎年そこかしこで開催されていることは知っている。
行きたいという気持ちもある。
でも実際に足を向けようかどうしようか、なんて考えているうちに、気付けばいつも終わってしまっている。
花火大会は、美しい。巨大な花が夜空に開き、少しあとに遅れてどおんと空気をふるわせる。きれい!と思ってシャッターを切ってみてもほとんどまともに写ることはない。だから目に焼き付けようと、目を凝らす。
阿呆のように口を開けて2時間ばかり夜空を見上げる。「おおー」とか「ああー」とかそんな言葉しかでてこない。
花火大会は楽しい思い出である。

ではなぜここ最近とんと行けていないのか。
終わってしまった後のあのせつなさを引きずりながら家に帰るのが寂しいからかもしれない。
でも、それに加えて、全て受動的に受けるだけ、というのがひっかかるのかもしれない。
実は、花火問屋にでかけて手に入れるおもちゃ花火が好きなのである。
東西問わず、夏の人形問屋はほとんどが花火店に変貌する。それらの店を練り歩きながら花火を探すのである。それがまた楽しい。

例年アトリエの秋のスケッチ旅行がある。その旅の場で、僕自身が強く希望して可能な限り、ささやかな花火大会を企画している。
その買い出しに花火問屋に行くのである。
手持ち花火にも毎年いろいろな新作が登場している。
吹き出し花火にはあいかわらずドラゴンが人気だし、パラシュートが飛び出すような仕掛け花火も楽しい。
この買い出しにいく能動的な楽しみは規模の大きい花火大会にはない。
きっと僕が一番やりたいのは、おもちゃ花火を買い漁ることなのだろう。

今年も花火大会には行けなかった。
でもスケッチ旅行でのおもちゃ花火大会は実施するのである。

今年もまた花火問屋にでかけるのだろう。
そういう意味では僕の夏は秋に来るのかもしれない。□