ミーハー

かつて知人をお芝居に誘ったときのことである。

彼は言った。

「誰が出演しているの?」

小さな劇団の芝居である。
誰がと言ったところで初めての彼には役者たちのことは知る由もあるまい。

そう説明したら「じゃ、いいや」と断ってきた。

 

ミーハーという人がいる。

世の中がお墨付きを与えたものこそが、彼らにとっての価値なのである。
それ以外にはあまり興味は無く、価値として受け取らない。

確かに、多くの人の心をつかむものは、最大公約数的な価値や魅力を持っている。一見の価値はあるだろう。

だが、そんなものであっても自分にとってはしっくりこないものだってある。
価値や魅力はお墨付きを得たものだけにあるわけでもない。
多くには知られてはいないが、マイノリティだからこその価値や魅力をもつものはたくさんあるのである。それを単なるミーハー根性、食わず嫌いで受け入れないのは、あまりにも勿体ない。

美味い酒を飲みたい。というから居酒屋に連れて行ったら獺祭ばかりを飲んでいる輩もいる。彼はただ、テレビがすすめていたものを飲みたいのである。
美味い酒は獺祭だけではない。同じ山口でも五橋、東洋美人があるし、東北には、くどき上手、写楽もある。日本全国津々浦々素晴らしい銘酒は溢れているのである。

誰かが良いといっていたものも確かに良いのだろうけれど、何が良いか、何が好きか、自分だけのおこだわりというものはやっぱり自分で見つけたいものです。□