獺祭 純米大吟醸45 寒造早槽 しぼりたて生
(山口県岩国市/旭酒造株式会社/100点)
昨今の獺祭人気はいかがものか。
居酒屋に行けば、どこもかしこも「獺祭あります」といった具合で、日本酒を飲まない店主がやっているようなナンチャッテ店ですら「獺祭並べとけば客が来るだろ」といった依存心丸出し、お仕事放棄的な雰囲気すらも感じてしまうほどに、獺祭は広く日本に知れ渡ってしまったのである。
日本酒を長く飲み続けているファンにとっては、それがとても煙たく感じられて、
「けっ。獺祭がなんぼのもんじゃい。五橋を飲みやがれ。雁木を飲みやがれ。」とへそを曲げたような遠吠えをしてしまうほどなのである。
そんな背景もあるので、なかなか書きづらい気持ちもあったりするわけですが。
このたびの、寒造早槽 しぼりたて生。
めっちゃくちゃ、美味い!
........のです。
甘さと辛さの共生という禅問答への奇跡的な回答。
それがこの酒にはあります。
以前「等外」を飲んだ時も、アウトレットでこれか!と感激に震えましたが、この度の「しぼりたて生」も改めて雷に打たれたような美味さなのであった。
長く美味い酒探しの旅を続けていると、知らぬ間に迷いの森に入り込んでしまうのかもしれない。まだ見ぬ酒に出会い「!?これは」などと眉間にしわを寄せて味わったりするのだけど、前呑んだ酒との差異がわからなくなったり、忘れてしまったり、もう何が一番だったかも忘れてしまったかのような感じが、ずっとしていたのです。
だけど、ここにきて獺祭。
すごろくで「ふりだしにもどる!」というような気持でした。原点に戻れました。
機械で作られた酒だとか、ミーハーだとか。いろいろ言う人はいるけど。
そんなひとことでまとめていいものではないよ。
ちょっとくやしいけど、やっぱり獺祭はすごいよ。まいりました。
追伸: だからこそ僕らは、獺祭を見返す酒を探す旅に出てしまうのだろうね。