ぼくらはみんな生きている。

 

中国で発生した新型のコロナウィルスが世界に広がっている。

 

一週間前のニュースでは「たいしたことはない。すぐに収束するだろう」とか言っていたように思うが、とんでもない。日に日に感染者は増え続け、さらにちょうど始まった春節で、10億以上の中国人が世界中に飛び立って、今や感染者は2千人を越えたと言う。アウトブレイクのはじまりである。

おそろしいことになった。

15年くらい前にSARDSが大流行したときのことを思い出す。
あのときも同じように中国から広まって、あっという間に目の前にまで迫ってきた。
「マスクをつけましょう」とニュースが放映されると、購入者が殺到し、あっという間にマスクは全国的に完売になってしまった。
通勤時にモノレールに乗ったとき、まさに100%、乗車する全員がマスクを装着していたのである。不二家のぺこちゃんやケンタッキーのカーネルサンダースまでもがマスクをしていた。あのときの不気味さは今でも鮮明に覚えている。また、あんな異常事態になるのだろうか。

 

それにしても、このたびの新型コロナウィルスは、たいしたものである。
SARDSのときに人類に敗れた教訓をいかして、言わば15年間かけて計画をたてて、進化をとげて、今度こそは!とふたたび人類に挑戦をしかけてきたのだからね。
彼らも、どうしたら自分達が生き延び、繁栄できるかを、ずっと考えていたに違いない。春節の今を選んだのも、世界中に一気に拡散させるのにもっとも便利な時期を選んだかのようにすら感じられるのだ。

感心している場合ではないのだろうけど。
生き物ってのは、人間だろうが、動物だろうが、昆虫だろうが、ウィルスだろうが、自分のすぐれた種をいかに強くして、駆逐から逃れて、広がって、生き延びるか。繁栄するかを、ずっと考え続けているのですね。

個体の主観では「ただ一生懸命生きているだけ」なのだろうけど、それによって、迷惑がかかる相手が現れたら、戦争をしてでも、勝ち残らなくてはならない。それが、生きることの宿命なのだろうと思うのです。

 

人間は新たなウィルスの驚異に立ち向かい、また克服するのだろう。けれど、また何十年かしたらきっとまた新しい種のウイルスが現れるのだろう。

 

ぼくらはみんな生きている。のである。□