今日の一冊

 

「medium霊媒探偵城塚翡翠」 相沢沙呼著 講談社(7点)

 

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(注意!! 以下すべて自分のためのネタバレメモです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・推理作家・香月史郎と、絶世の美女霊媒師・城塚翡翠がタッグを組んで、殺人事件を解明していくという短編作品。

・城塚翡翠霊媒の力で犯人を見極め、香月史郎があとから論理を探し出して犯人検挙するという、ちょっと「刑事コロンボ」をひねったような物語展開を取る。

・個々の事件の間に、連続女性殺害事件を繰り返すラスボス・鶴岡文樹のエピソードが差し込まれるが、
実は主人公・香月史郎が、真犯人・鶴岡文樹だった。という驚きの結末が仕組まれている。

・世間知らずで心に病を追っているという絶世の美女霊媒師・城塚翡翠は、香月と親しくなっていくが(それが真犯人のカモフラージュ)、最終話で香月史郎に別荘に連れ込まれ、衝撃の正体を明かされ、殺害されそうになる。

・だが、実は城塚翡翠は、そんな全てを見通していたナンチャッテ霊媒師(天才奇術師)であり、逆に香月を追い詰めていたという、どんでんがえしのどんでんがえしが仕組まれている。
それまで見せていた霊媒は全て作りごとで、それらは超高速の論理考察とトリックで真相を見極めていただけということが明かされる。

・重要な説明はすべて最終話に回しているため、前半のそれぞれのストーリーが、どうもこじつけのような、説明不足のような、すっきり感がない終わり方をしている。個々の話をそれでも楽しめるように描くのはもう一つの工夫が必要な気がした。
(例えば短編と全体のつなぎのうまさは米澤穂信「iの悲劇」が素晴らしい)

・最終話のどんでんがえし×2には本当に驚かされるし、前半のもやもやが、すべて氷解されるのは気持ちよいが、前半の各ストーリーの作り込みがいったん終わらせるためにつくったような感じがする。また、霊媒探偵や、美人+主人公というキャラクター構成も「屍人の殺人」など今どきのミステリーにありがちでそれが消化不良感に追い打ちをかけ「またか」と、ややしびれをきらすような気持になった。

このミステリーがすごい!とメディアにあおられすぎて、期待値が高くなりすぎてしまったこともあったのかもしれない。
このどんでんがえしは、ミステリーファンを驚愕させるに足りるだけすごいものであるのは確かだと思う。