雛人形はないけれど

massy2007-03-03

ただ今、長崎の五島列島の一つ、福江島に来ている。


当初は長崎市内に宿泊するつもりだったのだが、ランタンフェスティバルの影響だろうか、ホテルがどこも空いておらず、むしろ五島列島へは押し出されたという感じであった。だがしかし。結果として長崎市内のホテルが取れなかったことは「不幸中の大幸い」であったと言えよう。
大変すばらしい島である。何もない。それがすばらしい。にぎやかで楽しいのも良いが、今の自分に最も必要なのは「サイレンス」なのであった。福江島で聞こえてくるのは風と波の音だけである。これが自分を癒す。


長崎の観光においても五島列島まで足を伸ばすことは盲点となっているようだ。長崎港からジェットフェリーで片道1時間半かかるし値段も6000円と経済的にもなかなか敷居が高い。盲点となるのもそのあたりが原因ではなかろうか。しかし実は長崎や天草よりもたくさんの美しい天主堂が残されているとの噂。これは行くしかあるまい。


福江港に着くや否や、日産レンタカーでマーチを借りて天主堂めぐりを開始する。福江島は思った以上に大きく、各スポットへの移動に時間がかかったため、結局、堂崎天主堂と水ノ浦天主堂という2つの天主堂を見るだけで終わってしまった。しかしそれだけでも充分おつりがくるくらいに価値のあるものであったと思う。これらの天主堂は共に海のそばに静かにたたずんでいた。周りには近隣の村人の民家がたつばかりである。ひとけはほとんどなく、聞こえるのは風と波の音だけ。他にはどこかでうぐいすの鳴き声がするくらいである。一つ一つの天主堂を2時間くらいかけて丁寧に取材していたが、その間で訪れてきた人はわずか2〜3組しかなかった。本当に静かなのである。さらに、堂崎天主堂は堂内が資料館になっており入場料300円を払って中を見学できるようになっていたのだが、入口のすぐ横に公道があって裏に回りこめるため、入場料を払わなくても中に入れてしまうのである。まるでどこかの農家の取れたて野菜の100円無人販売のような。人間の良心を完全に信じきっているこの無防備さがおもしろくもあり、また愛しくもあった。


#なお余談だが、道中なんだかマーチの車内がすこぶる臭かったので「なんかマーチが臭いのですが!」と怒りをぶつけてみると、日産レンタのおねいさん曰く「前回のお客様が海釣りに使って染み込ませてしまったようです」とのこと。マーチで釣りに行くんじゃねえ。と怒鳴っても後の祭り。長崎はもう初夏のように暑くて、車に戻るたびに蒸し上った車内が阿鼻叫喚のにほいを放っておりました。


さて、ドライブを終えるともう夜である。折角の誕生日だしちょっと贅沢な食事でもしようということで五島牛のステーキを食べてみた。あまり聞いたことはない牛であったのだが、これがすこぶるうまくて驚愕であった。これまでの人生でこれほどうまい牛を食べたのは1度か2度か。自分のこづかいで食べたのだが、これはまさに誕生日プレゼントと言ってもいいだろう。ほんとにびっくりしてしまった。五島牛、あなどるなかれ。


明日は福江島を離れ、上五島に上陸し引き続き天主堂めぐりを続ける。□


#写真は堂崎天主堂