「千の風になって」について

COUNT DOWN-TVでここ数ヶ月来ずっと上位にランキングしているが、歌謡曲でもなく、バンドでもなく、ただあのいかにも「唄っている」という感じの濃厚なボーカルがヒットしているのだろうと特に気にも留めていなかったのだが、


先日NHKの「SONGS」に秋川雅史氏が出演していて初めてこの「千の風になって」を通しで聞いた。
歌唱力のすごさもさることながら特にその歌詞に強いものを感じた。すばらしい詩だ。
番組を通じ、誰が書いたかはわからない詩を新井満氏が訳し曲をあてたものだと知った。



多くを語らずきわめて少ない言葉で全てを想像させるシンプルで美しい言葉。


失うことの悲しみを美しさや希望に昇華させて見事に共存させている。
誰が書いたかはっきりとわからない。というところにも魅力を感じる。
別に有名な文豪が書き残したものでもなく、誰も気づかず路傍の石のように忘れられていた宝石。
ただ気付かないだけで美しいものは実はどこにでもある、ということを思い出させてくれた。



特に原文が美しい。
シャーロッキアンコナン・ドイルの原文のまま「シャーロックホームズの冒険」を読むという。
小泉八雲の「KWAIDAN」も原文の方がより強い。
グレート・ギャツビーを訳した村上春樹は日本語では同じニュアンスを絶対表現できないと書いていた。
そういったこと全てがこの詩にも通じていると思う。


言葉って不思議だ。そして偉大だ。□