今日の一冊

フランス座」 ビートたけし著 文藝春秋

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勢いがある。

ビートたけしという天才が生まれることになった浅草のフランス座の時代が描かれる。
まるで口語をそのまま文体に落としたような「勢い」がある。
これからやってくるまだ知らぬ漫才ブームの黎明期に、何か大きなことをやってやろうという勢いで飛び込んだフランス座。大成功をおさめた今になっても全く色褪せることなく、ビートたけしの記憶の中に鮮明に残っているのだろう。
それを聞く僕らにも、その時代の狂気や壊れ具合が鮮明に伝わってくる。

誰かに何かを1伝えるためには10とか100くらいの情報や表現で伝えなくては伝わらない。それでいながら、本書に語られるフランス座時代は、僕らにとっても1どころか10とか100くらいにいきいきと伝わってくる。
本当にすごい時代だったのだろうと思う。そしてそれを受け止めたビートたけしという器もすごかったのだろうと思う。

爆笑エピソードだけではなく、大学への通学を途中でほったからしにしながらも、なけなしの金で学校にいきなさい、という母の存在の大きさに涙を貰いそうになる。

名著です。□