もーやん怪談01 「からからさん」

職場のトイレの個室に入ったのです。

個室は3つ。

一番奥が様式で真ん中と手前が和式。

僕は手前の個室に入りました。

真ん中と奥の個室には誰もいません。

しばらくすると足音が近づいてきて、

誰かがトイレに入ってきました。

そして真ん中の個室に入ってきました。

がさがさと音がしてどうやら座ったらしい。

しばらく無音の状態がつづきましたが、

やがて。

からからからからからからからからからからからからからからからからから....ぶちっ。

大きな音を立ててトイレットペーパーを巻き取っている音が隣の個室から聞こえてきました。

巻き取る音が異様に長いのです。
3メートルから5メートルくらい巻き取っているように聞こえました。

お尻をふくのにそんなにたくさんのトイレットペーパーを使うものだろうか。潔癖症かな。勿体ないな......。

そんなことを考えていた矢先、

からからからからからからからからからからからからからからからからから....ぶちっ。

再び、同じくらいの長さでトイレットペーパーを巻き取る音が聞こえてきました。

そして、5秒後にも、また。

からからからからからからからからからからからからからからからからから....ぶちっ。

さらに、5秒後にも、また。

からからからからからからからからからからからからからからからからから....ぶちっ。

それが5秒おきに10回も20回も繰り返されているのです。

気味が悪くなってきました。

もし潔癖症であったとしても、そんなにたくさんのトイレットペーパーが必要なはずがないのです。一体何をしているのでしょうか。
お尻をふいているのではない?
もしかしてトイレットペーパーを持ち帰ろうとしている?
ならば別に巻き取る必要はなくて、ロールごともっていけばいいはずです。

そんなことを考えている間にも、

からからからからからからからからからからからからからからからからから....ぶちっ。

トイレットペーパーを巻き取る音は、いっこうに止む気配はなかったのです。

やがて、僕も用を済ませたのでさっと立ち上がり、手を洗うとすぐにトイレから逃げるようにして去りました。真ん中の個室からあの世のものが出てくる前に逃げないと...というような気分で.....。

結局正体はわからずじまいです。
でも職場のトイレである以上、倫理的におかしなことはできないはずです。
でも、もしかしたら本当に人間ではなかったのかもしれないのです。

いつぞや地下室のことも書きましたが、この建物はとても古く、いろいろな歴史を持っているから........。

僕は、謎の彼を「からからさん」と呼ぶことにしました。

夏の最後に、小さな怪談。紹介しました..........。キャーーーーツ!!□