危険な言葉

 

「別に死ぬわけじゃないから」

 

これは何のための発言なのだろうかと改めて考えている。
応援をしてくれているのだろうか。
違うと思う。
今、目の前にある大きな問題を「死なないから」といって、皆が立ち向かえるようになるとは思えない。
死なないから、といって万人がバンジージャンプを飛べるというのだろうか。
よく聞くフレーズで、一瞬硬直している状態を後ろから押してくれるかのような錯覚をする言葉だが、実はなんのなぐさめにもなっていない。世の中には、生き地獄という世界もある。

 

「別に減るもんじゃねえだろ」

なんて言って、裸を見せろと女性にせがむ男の言葉と大差ない。
死にたくもないのに、一緒に死のうと肩をつかみ海につれていかれるような言葉だ。
激励どころか、乱暴で、デリカシーのない、使ってはいけない言葉だと思う。

 

「人生は一度きりだから」

 

これもまた危険な言葉だ。
正しいことを言っているとは思う。
だけどこの言葉を聞くときは大抵「目の前の困難から逃れるための言い訳」に使われているように感じる。
特に、こちらが目の前の問題に真剣に悩んでいるときに、アドバイスとしてこの言葉が入ってきたときは、要注意だ。
人生、時には逃げることも必要かもしれないけど、本当に逃げるべきかは、じっくり時間をかけて吟味すべきだ。
目の前の難題から一瞬逃げれるような気がしても、本質的に自分に欠落があれば、また次の環境で同じ難題にぶちあたるのである。結局ずっと逃げ回るだけになる。
正しい使い方をできる人は、むしろこの言葉を使わない。
目の前の問題に立ち向かうことで、振り返る時間もないのである。□