バリウム奮闘記

 

今年のバリウムは厳しかった。 

 

毎年苦しむのだが、今年は特に苦しんだ。

数年前に、5年先に血液検査ですべての癌検査をできるようにする。なんていう報道を聞いた気がしたが、あれから5年くらい経っても、未だにバリウム検査は健在だ。

いつになったら人類はバリウム検査を卒業できるのだろうか。

 

かつてに比べて飲むバリウムの量は減ったと思う。

かつては300mlくらい飲まされていた。

今は150mlくらいになったろうか。それでも苦しみは消えない。

バリウムに、珈琲味やらレモン味やらの味も付けられるようになった。

だが、そんなものも焼け石に水である。

検査が終わってみたら、何味を飲んだかなんて完全に消し飛んでいる。

 

発泡剤を喉に流しこんだとたん、胃が膨張して激しい嘔吐感に見舞われるが、それを押し込むように空っぽの胃にバリウムを流しこむ。
一瞬で訪れた二日酔いのような状態のまま、検査機に搭乗し、手すりにしがみつく。
吐き気があろうがなかろうが非情に機械は360度、ぐりんぐりんと回転して、逆さ貼り付けのような状態でぴたりと停止する。
飲んだばかりのバリウムが逆流して、今にも口から吹き返しそうになるのを、歯を食いしばってこらえる。

更にそこから、右回りだの左回りだの激しい運動を求められ、上から下から、右から左から、もうやめて。と懇願する気持ちを踏みにじりながら、機械は回転を止めない。
地獄というものの1つの形を表しているようにすら感じる。

はい、お疲れ様でしたー。なんて声が聞こえたとたん、げふうううううううううううううううううううううううううううううう!と巨大なげっぷが噴出してくる。

ウェットティッシュを渡され、鏡越しに汚れた口の周りを拭く。真っ白になったのは口の周りだけではなく、顔全部が蒼白になっていて、もはや生きる屍だ。

 

そして検査が終わってすぐに飲まされた下剤で、今度はトイレとオトモダチである。

当然、下剤を使ったところで、さっきのんだバリウムはすぐには出てこない。

明日明後日という時間になって、ようやくでてくるのだが、それがまた固い。そして重い。

便所のレバーをなんどもなんども押し込もうが、びくともしない。全く流れていく気配がない。

WEBでしらべてみたら、同じような事例は世の中には溢れていて、お湯でとかせだの、薬品でとかせだのあるが、目覚ましい効果は出ない。

ながし、ながして、またながす。そんな死闘の果てに、ようやくすべてのバリウムが視界から消え失せてくれるのである。

心の底から、こりごりである。コリゴリ君である。

来年は?再来年は?一日でも早く、血液検査技術が解禁されることを切に願っている私である。□