筆まめになりたい。
....とずっと思っている。
昨今、PCやら携帯のメールによって、簡単な情報は即座に共有できるようになった。だが、早ければそれでいいのか...?
電子メールの機械的な文字づらにはあたたかみは一切ない。時にはこちらの想定していない解釈までがなされ、お互いの気分を害することすらある(まあ単に文章が稚拙だといえばそれまでだが....)。
対し、時折もらう手書きのはがきや手紙に宿る温かみにほっこりすることがある。情報としての量や早さは電子メールには及ばない。だが、時間をかけて手でしっかり書き、時間をかけて自分のもとへ届いた手紙には、電子メールの即時性を超越する「何か」がある。救われるような気持ちになることがある。
そんな手紙をもらうたびに筆まめになりたい。と思っていた。
先日、ちょっとしたきっかけて知人に手紙を書くことになり、この機会に万年筆を購入しようと思った。
とはいえ、とても高いものである。買うのはいいが、長く使いこなせるかどうかもわからない。
そんな中でも3000円程度で買えるビギナークラスの一品、パイロット社の
プレラという製品が目に留まった。デザインもおしゃれで17色のインクを選ぶこともできる。
梅田にできた丸善の2階にあるNAGASAWA文具センターに足を運んだ。
予算は4000円、プレラをピンポイントで入手するつもりだった。
が、あてがはずれた。試し書きをしてみたところ、思ったほど気持ちよくなかったのである。
店員の方がとても丁寧に応対してくれた。万年筆の薀蓄や、使い方、おすすめの製品や流行などひととおりレクチャーしてくれた。
そのなかで、最終的に購入を決定したのが、プラチナ社製の#3776である。
予算をややオーバーした¥10500の品であった。
が、店員さん曰く、2万クラスに匹敵する書き味と品質だ、と。
実際試し書きをさせてもらって、うなった。
とにかく、気持ちがいい。
その他にもいろいろ触らせてもらったが、たかが万年筆と思っていたのが大間違い。どの一品一品もそれぞれ書き味が全く異なり、ひとつひとつ職人が徹底的に拘りぬいて作っていることを身をもって知った。
Made in Japanと刻印がされている。
Made in Japanの品を触るのは実はとても久しぶりだと思った。そしてやっぱりMade in Japanはすごいと思い知った。
昨今の安くてなんでもおなか一杯。の消費者至上主義の中国製製品の台頭はいかがなものかとどこかで感じていた。
なんでも安ければいいってもんじゃない。それぞれのものにはふさわしい価格があってしかるべきだ。
そんな大切なことを最近、みんな忘れかけている。僕も。
このたび、プラチナの万年筆を手にして、それを強く思い出した。
十五夜の夜。仕事帰りに机に向かい、#3776で手紙を書いている。
僕の気持ちが少しでも届くといい。□