今日の気になる

 

プラチナの万年筆3776を10年間、愛用している。

 

...が。

浮気というわけではないのだけれど、以来ゆっくりと、ゆっくりと、もうひとつ、新しい万年筆が欲しいな、と思い始めていた。

もともとは友人に万年筆を勧められて、僕の方も、ちょっと大人の文房具を触り始めてみたい、なんて気持ちでナガサワ文具に向かったのだが、その時初老の店員さんがとても人当りもよく、こちらの要望も親身に聞いてくれて。とても貴重な出会いとなったのでした。
中途半端に安いものを手に入れるよりも、長く楽しめるいい万年筆を買うのが良いですよ。とその初老のセバスチャンは勧めてくれた。
高々3000円程度のなんちゃって万年筆を探すつもりで行ったのだけど、気が付いたらプラチナの3776を購入してしまっていたのでした。

それがこの万年筆との出会いであり、またナガサワ文具との出会いなのであった。

ちょっと大人の世界に背伸びをしてみたいという気持ちで万年筆を手にする人はいる。僕もその一人だった。
だけどその後、この「じゃじゃ馬な文房具」にどれだけつきあっていけるか。は、やはり体質があるのだろうと思う。
誰もが漠然と万年筆を使いこなしてみたい、と最初は思うものだ。
だけど、使い始めてみたら、多くの人にとってはその使いづらさがすぐに面倒になるだろう。
インクが出にくい、すぐにペン先が乾いてしまう、常にインクの補充を考えていないといけない、書きづらい、インクがとても水に弱い.......等、挙げていったらきりがない。
万年筆は、本当に面倒な文房具である。
よほどでないと付き合いきれないだろう。
いまやボールペンやらなにやら、カジュアルでありながら使いやすい筆記具がどんどん開発されているのである。わざわざこんな高くて面倒な文具に手を出す必要はないではないか。

 

だが、僕には不思議にも万年筆が体質に合った。

 

この面倒くささがとても愛おしいと思い、以来一日たりとも使わない日はない。
No 万年筆、No Life!なのである。

そんな僕が10年愛用したプラチナ万年筆を持ちながらも、次はさらに大人な逸品を欲しいと思っていた。
直ぐに手に入れたいというわけでもない。モンブランなど漠然と手にしてみたいとは思っていたけど、今のものがあるのにわざわざそんな高額なものを手に入れる理由もない。と自分をフィルタするような日々が続いた。

 

.....のだが。

 

見つけてしまったのです。

まるで雷に打たれるような美しいフォルムに、色合いに。
中学生の初恋のような出会いをしてしまった。

神戸三宮のナガサワ文具に立ち寄った時にウィンドウの中で目にしたモデル。

インジゴを思わせる深いブルーの色合いのキャップに、それに相反するように色鮮やかなバーミリオンが輝かしい一品。

 

f:id:massy:20191217230333j:plain

 

レオナルドオフィチーナイタリアーノ

モーメントゼロコレクション。

 

なんという美しいボディと色だろう。
僕は一瞬でその魅力に取りつかれてしまったのである。まるで初恋かのように。

そのときは衝動買いはやめようと一旦は帰宅したものの、その後雑誌でモーメントゼロコレクションの紹介記事を偶然、目に入れてしまって、じゃあもう一度だけ見に行こうか。と、再度ナガサワに向かったのであった。
それでも迷いました。とても高価な買い物ですから。
本当に大切にできるのか、使いこなしてあげられるのか。そんな葛藤を店頭で何十回も繰り返しながらも、「今しかない」という声が聞こえ、次第に財布のひもが緩くなっていきました。

 

そしてついに............!!

試し書きから購入へ。大きな決断となりました。

 

それ以降、もうずっと肌身離さず持っています。
いつ眺めても、使っても最高の一品なのでした。

なんだろう、モーメントゼロを見るたびに、永遠に大人にならない柴犬の子犬をずっと眺めているような、そんないとおしさが見るたびに起こるですね。本当にいい買い物をしたと思っています。

従来のプラチナに新しい仲間を加え、2020年の僕の文房具ライフはいっそう充実しそうな楽しみな気配を感じたのであった。□