人生最高のお買い物

 

BRUTUSが創刊1000号を突破した。

 

日本の経済成長と共に、日本のカルチャーや豊かさをスタイリッシュに切り出し「平凡パンチ」「Popeye」「クロワッサン」といった雑誌を次々にヒットさせてきた平凡社(現・マガジンハウス)の兄弟雑誌だ。

 

1000号目の特集は「人生最高のお買い物」。

 

各界の著名人が、人生で買ったものの中で最も良かったもの、大切にしているものを紹介している。

自分にとっての「人生最高のお買い物」は、なんだろうと考える。いくつかパッと脳裏に浮かぶものがある。

 

万年筆。

プラチナ3776、レオナルドオフィチーナのMomentZero。

今、自分が身に着けているものの中でおそらく最も高価なものであり、かつ最も不便なものである。

使い始めてからだいぶたつが、手を汚さずにインクを入れられたことがない。

インクはなかなか乾かず、乾いたとしても、少しでも濡れれば全てにじんでしまう。

それでも万年筆という道具を使うと、「書いている」という行為そのものの誇りが、手から体中に伝わり、自然と背筋が伸びてくる。手放せない。

究極の不便益である。

若いころは筆記具に5~6万も出すという価値観がなかった、だが今となっては一生手放せなくなったこの美しいものづくりには妥当な価格だと感じている。

 

「人生最高のお買い物」とは、買ったときの孤高の達成感を出発点に、下山することなく、生涯尾根を歩き続けられるような登山のようなものだ。

出会ったときの爆発的な愛を、生涯自然に貫き通すことができる、オシドリ夫婦のようなものたちを指すのであろう。

 

あなたの「人生最高のお買い物」は何ですか。□