今日の一冊

 

漫画「ブルーピリオド」①~⑥
 山口つばさ著 講談社アフタヌーンコミックス)

 

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絵画制作を扱った漫画というのは意外にも少ない。


東村アキ子女史の「かくかくしかじか」は僕の中での不動のオールタイムベストだけど、ここにきてまたすごい新星が現れた。
「かくかくしかじか」は東村アキ子女史の金沢美術大学の受験や美術大学の生活について触れてはいるけど、どちらかというと奇抜でインパクトのあった「先生」を描くのが物語の骨格になっていた。

「ブルーピリオド」は描く人間を描いている。
しかも実際に描かれた学生の作品を漫画の中にトレースしている。この徹底した作品作りに驚く。

仲間たちと煙草を吸い、酒を飲み、そつなく上手に付き合う。それでいて、勉強もしっかりする高校2年の優等生・矢口八虎。すべてを上手にこなせる彼だったが、本当にやりたいことは、ない。
友人と遊び明かした早朝の渋谷に、青の美しさを感じた八虎は、その気持ちを美術の課題で描いてみるが、その反響の大きさに、描くことの喜びを見つけ出す。
そこから、彼はまっしぐらに東京藝術大学合格を目指し、戦いを始めるのである。

 

僕は、絵を描き始めて20年になる。
だが、僕は美術大学に行っていない。
美術の授業なんてのは高校生以来、受けていない。
それが今もコンプレックスになっている。通信大学で単位だけでも取ろうかと考えたこともあったが、スクーリングなど時間が取れないし、中途半端ならば意味がないと思い結局中断している。


絵を長く続けてはいるが、作品には進歩はなく、年々堂々巡りを繰り返し、あの燃えていた初心も知らない間に形骸化してきていたのかもしれない。

「ブルーピリオド」はそんな僕に雷のような警鐘をならし、ゆさぶってきた。
作品の中で、語られる美術の授業は、僕にとってのいまさらの「授業」になっていたりする。
忘れかけていたものづくりの楽しさという「初心」を思い出させてくれるきっかけにもなっている。

なにはともあれ、やりたいことに向かってまっしぐらに向かっていく主人公とその仲間たちの輝きに、ひるむ。
絵を描くというのはひとつのきっかけであり「何かに一生懸命取り組む」ということの美しさをまっすぐに突き刺してくる。

すごい作品が現れた。マンガ大賞、アニメ化。そんな流れがなんとなく見えてきている。アニメ化したらハイスコアガールを超えるインパクトになるかもしれないな。□


作者インタビュー記事
https://manga.torico-corp.com/ma/blueperiod/

 

山口つばさブログ
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