★おーい、でてこーい

 

かつて「ウラノス」という芝居を観た。

 

観たのはもうかれこれ15年以上前なのだけど、

今になってもこの物語が頭にこびりついていて、

時折思い出すことがある。

 

あるさびれた村の裏山にある、

あるさびれた神社の横に、

深くて底の見えない大きな穴があった。

村人たちが、ごみなどを捨て始めるが、

やがて、どれだけごみを捨てても一杯に

ならないゴミ捨て場の噂が国まで伝わり、

核廃棄物をも捨て始めてしまう。

だが、

実はその穴は未来の空につながっていた。

このままでは未来の空から核廃棄物が

降り注いでしまう....!

誰かが止めないと....!

.....というところで物語が終わる。

 

なんだか、現代社会における様々な

「先送りした問題」への警鐘を

鳴らしているような、

生々しいホラー作品だった。

 

・・・・という話を、知人に話していたところ、

その話を知っているという。

中学時代に、英語の教科書「NewHorizon」で、

その物語を読んだことがあるというのだ。

 

ウラノス」というタイトルからも、

この芝居はどこかの世界の神話のようなものを

原作にしたものなのではないか、と思っていた。

やはり海外に原作があったのか、と

どうしてもその原作が読みたくなり調べて行った。

 

だが、やがて、驚くべき真実にたどり着いた。

 

ウラノス」の原作は、

 

星新一ショートショート

「おーい、でてこーい」であった。

新潮文庫「ボッコちゃん」に収録)

 

 

 

 

穴に向かって「おーい、でてこーい」と叫んだ声が、

未来の空から「おーい、でてこーい」と聞こえてくるラストは、

わずか数ページの短編でありながら、ぞっとする恐怖を感じる。

 

勿論、芝居としては、

ある日村に現れた見知らぬ老人が、実は過去に穴に落ち、

現代に現れた老人であり、そこから、この穴の正体が

発覚していくといった、ホラーとしての脚色がされている。

 

今改めて、星新一ショートショートを振り返っているのだが、

世の中に転がる「おや?」「あれ?」といった小さな発見を、

ショートショートという物語に変換して風刺していくスタイルは

娯楽でありながら、警鐘のようでもあり、

効率化が行き過ぎた、

多くのモノやコトが在庫となった、この時代にこそ、

いったん立ち止まり、読み返し、考えるべきなのかもしれない。□