サムライの友

東京・京橋界隈はビジネス街でありながら画廊も多い。


折角出張に来たんだ。と、時間が取れればなるべくあちこち足を踏み入れるようにしている。
先日おもしろい絵が展示してあった画廊のことを思い出し、ふと足を向けてみたのだが。



.....!!衝撃が走った。



油彩の抽象画が空間を埋めている。
どれもなんと落ち着いていて品格のある絵だろう...!
瞬時に脳がスイッチし、絵の中に吸い込まれていく。


最近の油彩作品でこのような品格を感じることは滅多にない。
描くということの敷居が低くなっているせいだろうか、よくわからないものを目にする機会が増えた気がする。そもそも描く当人に、描く前の段階での「たしなみ」というか「型」といったものがほとんど身についていない気もする(人のことを言えた立場ではないが)。
とにかく現代の日本においてはめっきり戦闘力の高い油彩画を目にすることは少ない。


しかし。そういう中にも「本物」は、居る。


独りよがりにならず、客観性を持ち、見る側に「気持ちよい」と思わせること。そういう正しさをもって作品を作っていくこと。当たり前なのだがそれができない。
特に抽象画などとなれば精神世界の具現化なので、えてして「そんなもの誰も見たくねえ」的な絵になりやすい。現にそんなものばかり見てきた。
しかしこのクオリティは何だ。洋画でありながら日本画のようなこの落ち着き。彼岸から来たような静寂感。


この日は丁度個展初日だったようで、作者の臼木英之氏がおられた。
仕事中であることを忘れ話し込んでしまった。共鳴する価値観。どこに投げてもヒットを打ち返されるような、心地よい密度の高い時間。品格を感じる人柄。
やがてこの落ち着いた静けさはこの人柄と1週間かけて仕込み挙げる漆による地塗りから来ているとわかる。...すごい。...うれしい。



それにしてもここ最近驚いてばかりである。


ここが東京だからだろうか...。


自分のアンテナの感度が上がったからなのだろうか...。



帰りにはしっかり名刺をいただく。いつか時間をいただいて酒でも飲みながら絵画論を夜通し展開できるかもしれない。


転勤前だというのに早速、サムライの友(というか師匠?)に出逢う。□