展覧会「アルフレッド・ウォリス展」(9点/10点)

目黒にある東京都庭園美術館にて開催中のアルフレッド・ウォリス展を見学してきた。


もともと画家の名前すら聞いたことがなかった。
それもそのはず。聞けばアルフレッド・ウォリスは絵描きではなく船乗りとして生涯をすごし、70歳に至ったころからふとそのへんに転がる板の裏に絵を描き始めたとのことである。


但、ポスターで初めてその絵を見たときには何か引き付けられるものがあった。
ぱっと見、稚拙な感じを受ける。小学生が描いた絵のようだ。
それでも描くことの本来の理屈抜きの楽しさというか素朴さというか。そういうものが前面に噴き出している感じがする。
何もねらっていない。何の理屈もない。ただ楽しんで描いている。それがすごいのである。
長く描き続けていると、いろいろなことが頭にこびりついてくる。それはよく言えば「経験」ということなのだが、悪く言えば「屁理屈」あるいは「恐怖」というものである。


何故うまくいかないのか?どうしたらいい絵が描けるか?云々.....。


そんなことを考えながら描き続けているうちに、次第に描くことが苦痛に変わってくる。始めは楽しかったはずなのに。
アルフレッド・ウォリスの絵にはそんな屁理屈や恐怖など、余計なものが一切付いていない。ただ本能のおもむくままに楽しく描いている。


そんな風に描いていたい。そう思い出させてくれた。いい展覧会だった。□