夢十夜 「第一夜」

こんな夢をみた。


気が付いたらニューヨークにいた。
どこかのダウンタウンのような場所である。しかし金持ちのような人たちはいない。清潔感はないがむしろ生活力に溢れた人たちが集うカフェのような場所にいた。
そこで我々三人はお茶をしていた。一人は自分、もう一人は松井秀喜、もう一人はイチローであった。全員大リーグのユニフォームを着用していた。もちろん自分もである。
この三人は日本人大リーガーの中でも特に成功した三人のようだった。しかし、三人ともそういう感覚が全くない。むしろそんな偉大な業績すらすっかり忘れ去ってしまっているかのような自然体であった。


「最近どうしてる」と聞くと、「ようやくアメリカにも慣れてきた」とイチローが答えた。


「そういえば松井とイチローはよく会ってんの」と聞くと、「たまにね」と松井が気さくに答えた。


三人は本当にさっぱりとどうでもいい話を続けていた。しかし三人からは、誰も成し遂げられないような偉大な業績を上げたものだけが放つことのできる自信のようなもの、オーラのようなものが「勝手に」出ていた。


ダウンタウンのおばちゃんが声をかけてきた。


「あんたらすごい人じゃないのかね」


それで三人はようやく思い出した。僕らはすごいやつだったのだ、と。


おばちゃんはモノクロの写真を1枚くれた。


我々三人が並んで座って話している様子を後ろからうつした写真だった。大リーグのユニフォームに身をまとった三人が静かに並んで話していた。なんだかとても誇り高くて、栄光に満ちた、強さと静寂が共存するような一枚だった。もう欲しいものは何一つなかった。


なんだかとても幸せだった。□